溶接工場の事業継承 事業成長を続ける36歳の若社長(溶接ニュース2023年12月12日号より)

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 製造業の黒字倒産相次ぐ

近年、国内の溶接事業所では、中小企業の黒字倒産が大きな課題となっている。事業の継承がスムーズにいかないことを理由に多くの製造技術が無くなっていくことを懸念する声が広がる一方、少子高齢化、3Kイメージなどを理由に、「事業を継承できない事業所の増加」に歯止めがかからない。

そんな中、米中貿易摩擦、コロナ禍、ウクライナ危機など、多くの逆風をはねのけて事業規模を拡大するモハラテクニカ(群馬県高崎市)に注目が集まっている。36歳とまだ若い同社の茂原亮太社長に、事業継承までの歴史と、スムーズな継承について話を聞いた。

 

 事業継承で大切なこと

モハラテクニカは2021年に事業を継承した私で3代目となります。プレスの技能者として創業した祖父(茂原宏氏)は、「プレスでの量産品の受注だけではいつか事業が行き詰まる」とし、技能の幅を広げて、板金事業所としての道を切り開きました。2代目社長である父(茂原純一氏)は、技能者として祖父と並ぶことだけを目標とはせずに、トルンプ社製のレーザ加工機をいち早く導入し、事業の高速化・拡大を図ってきました。

私が事業を継承するにあたって、尊敬する2人の経験者の背中を見ることができたのは、私だけの大切な経験です。

右から2 代目茂原純一氏、創業者茂原宏氏.jpg

(左から創業者茂原宏氏、2 代目茂原純一氏)

私が祖父・父という経営者から学び、父が亡くなったタイミングで事業を継承した上で、感じているのが「1人で決断すること」の心細さです。社員の命運をかけて、不安定な未来に対して一つひとつ決断するのは怖い。だからこそ、1番の技能者でなくとも、「全ての作業工程を体験しろ」と、よく父から言われ、当社の全ての作業工程を学んできた経験が生きているのではないかと思っています。

事業を継承した今も、顧客から依頼が入ると、まず私自身が全ての内容を確認。その上で図面化し、図面も全て目を通し、加工法や、その手法についての検証も行うようにしています。1番でなくても、全ての工程で技能者として修業していた時期があることが私の財産ではないでしょうか。

これから事業を継承する人、これから事業を継承させる人に伝えられることがあるのであれば、「一緒に働く人人材を、継承する人に決めさせること」の大切さです。

私は入社時に、「私がどのように成長したとしても、現在の従業員は父を支えている人材で、自分と一緒に仕事をする従業員は自分で選び出すことも仕事なのだ」と痛感しました。そのため、現在43 人の従業員のうちの約半数は私が採用を決めています。

結果的に、最近になり当社は、「会社全体で意思疎通が取れていること」を賞賛されることが増えてきました。これは父が人事権を私に任せてくれたからだと感謝しており、これからも、「共に働きたい人」「共に成長できる人」は、自分の目で見極めていきたいと思っています。

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