高校生溶接士を訪ねて:技能五輪全国大会電気溶接職種に出場 五輪国際大会目標に意欲燃やす
(「溶接ニュース」2025年11月25日付 1面より)
国内の青年技能者(原則23歳以下)に努力目標を与え、広く技能の重要性や必要性をアピールする場となる技能五輪全国大会。全40余の職種で技能レベル日本一を競う競技会で、社会人に交じって高校生が奮闘する姿も散見される。
先頃行われた第63回大会では「電気溶接」職種に出場した選手31人のうち、高校生は日立工業専修学校(日専校)の塙和樹さんただ一人。競技後の心境を「自分なりの目標を達成できたが、反省点もあり、再挑戦したい」と話す。
日立製作所が運営する日専校は、茨城県日立市にある文部科学省認定の3年全日制高等専修学校。電気・機械・溶接の3科を設け、通信制高校と連携していて高等学校の卒業資格も得られる。
そこに通う塙さんは18歳の溶接科3年生。自身が1年生のとき、3年生の先輩が技能五輪で社会人らと腕を競う姿を見て感銘を受けたことが溶接を志すきっかけだったという。未経験から始めた溶接は突き詰めるほどに面白く、「さらなる技能の高みを目指す探求心にかられる魅力がある」と語る。
(塙 和樹さん)
2年生に進級する際の専攻決めで溶接科を選択して以来、技能五輪出場を目標に据えて溶接に打ち込んできた。学科講習と溶接実習のカリキュラムに沿って溶接技能者評価試験(JIS検定)のアーク溶接、マグ溶接、ティグ溶接などの資格取得に必要な基本知識と技能の習得に励む傍ら、部活動(剣道部に所属)の合間を縫うようにして限られた時間の中で技能五輪に挑戦する準備を進めていく。
電気溶接職種の競技では被覆アーク、マグ、ティグの溶接法を用い炭素鋼、ステンレス鋼およびアルミニウム合金の溶接を行う。課題は平板とパイプの突合わせ継手、平板とパイプを組み合わせた構造物の製作などがあり、立・横・上向と水平の様々な溶接姿勢が要求され、不具合のない完全溶込み溶接やすみ肉溶接を実現するための技術が問われる。
溶接科教諭が認める技量を持つ生徒が参加するチャレンジコースに加わり、部活動と並行して技能五輪の訓練を重ねた塙さん。平日の2日間は部活動の時間(2時間程度)を使って溶接練習に励み、土曜日は隔週で朝8時から午後6時頃までを練習に費やした。
2年生では今年2月の茨城県予選会に向けて圧力容器を溶接するための要素訓練に集中的に従事。平板同士とパイプ同士の突合せ溶接、平板とパイプのすみ肉溶接、平板角部のすみ肉溶接と各継手に必要な姿勢(立・横・上向と水平)、被覆アーク溶接とマグ溶接の使い分けなど学校の実習範囲を超える内容も含め一通り習得に努め、最終的に圧力容器の組み立て・溶接の練習を積んだ。県予選突破後は、全国大会に向けてステンレス鋼とアルミニウム合金の要素訓練に移行。すみ肉、突合せとそれぞれに必要な姿勢や組み合わせ溶接の練習に加え、採点項目のX線試験対策、細かな条件出しを行いながら仕上げていった。
競技会参加は初めてで、自信がないまま県予選本番を迎えたが、耐圧試験で失敗しないことを念頭に溶接を行い、それが功を奏した。予選を見事通過して臨んだ全国大会では「せっかくの大舞台を楽しんでやろう」との意気込みで課題に挑戦。全力を出し切って自分なりの目標を達成できた点を評価しつつ、自己採点は70点とし技能の至らない点を反省する。これを踏まえて「一層の上達を志したいと思う」と競技結果を前向きにとらえているようだ。
塙さんは同校卒業後、日立製作所日立事業所原子力製造部に就職するため、10月末から入社予定の事業所に赴き、約半年間の工場実習を通して社会人の基礎や製品知識、製造技術などを学ぶ予定。今回の技能五輪では上位入賞こそ逃したものの、再挑戦の気持ちは固く、4月から勤める職場で技能五輪国際大会への出場を目指して訓練していきたいと意欲を燃やす。
(「溶接ニュース」2025年11月25日付 1面より)



