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高校生溶接士を訪ねて:上達した後にこそ課題見つける努力 将来の夢は造船事業所の溶接士

溶接高校生
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(「溶接ニュース」2025年11月4日付 1面より)

国内で溶接を学ぶ学生が出場を目指す大会のひとつが「全国選抜高校生溶接技術競技大会 in 新居浜」だ。9回目となった本年度は、日本溶接協会四国地区溶接技術検定委員会実技試験場(愛媛県新居浜市)で実施され、17道県36人が溶接技術を競った。同大会で炭酸ガスアーク溶接部門(半自動)を制した橋本侑磨さん(愛媛県立今治工業高校)に話を聞いた。
  
現在3年生の橋本さんが溶接を始めた理由は「1年生のときに溶接の授業があり、他の技術・技能と比べても『技能者の腕』が求められるように感じたから」だという。興味を持ったものの、橋本さんが通う今治工業高校では1年生は10時間、2年生は20時間、3年生は30時間しか溶接の授業時間がない。橋本さんは、より専門的に学ぶことができると聞いた「機械造船部」に入部した。
 
橋本さんが溶接でこだわっているのは「電流・電圧で調整すること」。これは溶接棒を持つ手を動かすウィービングを初期に褒められたことが嬉しくて、練習を積んできたため、溶接姿勢が2年生になる頃には定まっていたからだという。橋本さんは姿勢を崩さず、電流値などの設備出力で調整し、作品精度を上げる方法を選んだ。

こだわりのある橋本選手の姿勢.JPG(こだわりのある橋本さんの溶接姿勢)

同校には、同じ新居浜大会の優勝者であり、橋本さんの先輩でもある武田佳也さんが手掛けた溶接作品が豊富に残っているという。橋本さんは、一定量、整った溶接ビードが引けるようになった後も、前年度の優勝者である武田さんの溶接ビードと並べて、自身の作品精度が荒い点を見つけては修正していった。
 
例えば9ミリ鋼板を溶接する場合、橋本さんの場合3層溶接して仕上げており「3層目が寸分狂わずに同じ高さでそろっているのか」といった部分を、先輩の武田さんの溶接ビードと比較。橋本さんは「機械造船部の顧問、一色卓也先生から『上達した後にこそ課題を見つけるように』口酸っぱく教えられてきたので、上達した後は、徹底的に武田先輩の溶接ビードと比較し続けて課題を見つけ克服していった」と振り返る。
 
凄腕の先輩が同じ高校にいたこと、その先輩が手掛けた作品と自身の作品が「どのように違っているのか」を言語化してくださる一色先生の存在こそ、橋本さんの溶接技能が成長できた屋台骨なのだ。
 
橋本さんの将来の夢は造船事業所で溶接士として働くことだという。「私が暮らす今治市には、日本最大の造船事業所である今治造船をはじめ、日本有数の造船事業所が立ち並んでいる。日常的に造船の風景を眺めてきたこともあり、それ以外の選択肢は考えていない」(橋本さん)。造船溶接士が新たに活躍する未来には心躍る。

(「溶接ニュース」2025年11月4日付 1面より)

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