好調な経済で注目を集めるベトナム製造業の『今』 ― ジェトロに聞く「MTA Vietnam 2025」と日本企業の挑戦 ―
ベトナム最大級の製造業展示会「MTA Vietnam」
ベトナム最大級の製造業関連展示会「MTA Vietnam 2025」が2025年7月2~5日にホーチミンのサイゴンエキシビジョン&コンベンションセンターで開催された。本展示会は金属加工、工作機械、工具、検査機器などを網羅し、13,000人を超える新規来場者を集めた。
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)は、日本の中小企業を中心に16社を集め「ジャパン・パビリオン」として出展。各社は切削工具や精密部品のほか、近年注目が高まる「製造業DX(デジタル・トランスフォーメーション)」分野のソリューションも披露した。
ベトナムにおける製造業・人材育成の動向、さらには日本企業の海外展開戦略の現在に関して、「ジャパン・パビリオン」を推進した海外展開支援部の藤本勉氏、吉積実里氏、野出祥子氏に話を聞いた。
(盛況となったジャパン・パビリオン 画像提供:ジェトロ)
製造業DXは『生産性向上』の切り札
ベトナムでは、賃金の安さや若年労働力の豊富さから、人材不足は他国ほど深刻ではない。しかし、長期的には2040年前後に人口はピークを迎え、50年代には減少に転じるとされている。こうした背景から、「今こそ現地展開と人材育成の種をまく」という戦略が動き出している。
また、ベトナム政府はDX推進を国家戦略に掲げており、生産性の向上や技術継承を支えるツールとしてのDX導入に注目が集まっている。展示会では、AIを活用したマニュアル作成システムなども紹介され、訪問者の関心を集めた。
日本の工作機械・工具は高評価
展示会では、日本企業のグラインダーや工作機械、精密工具に対する評価は高く、来場者との商談も多数行われた。「日本製品の品質の高さ」は現地でもよく知られており、機器の小型化や高精度化への対応も進んでいる。
一方で、中国企業の進出も著しく、今回の国別の出展企業では第2位の92社を占めた(日本は第3位の61社)。今後、日本企業にとっては競争環境の激化も想定される。
(会場のSaigon Exhibition & Convention Center 画像提供:IEBC)
若手人材の獲得と定着をめぐって
人材面では、ホーチミン工科大学など設計やCADに強みを持つ理系学生を日本で雇用する動きが活発化している。ジャパン・パビリオンのブースには実際に日本企業の内定を得たベトナム人学生も訪れ、企業担当者と展示会に同席したという。
ベトナムの学生は「日本の学生と同等かそれ以上の技術力を持つ」と評価されており、中小企業にとっては大手との人材獲得競争を補完する戦略として、現地リクルートと教育の拠点化が注目されている。
(国策である製造業DXは生産性向上の切り札 画像提供:IEBC)
次なる視点、ASEAN・インド・欧州へ
ジェトロの機械分野では、今後、インド、チェコ、タイで開催される展示会にも同様にジャパン・パビリオンへの出展を予定しており、日本企業からのニーズや産業動向などを注視しながら支援を進めていくとしている。 日本企業のグローバル展開と市場拡大に向けた一手は、ますます多極化・高度化していくだろう。
(「Welding Promenade」vol.45 2025年9月1日発刊号より)
9月1日に配信する「Welding Promenade」Vol.45では巻頭特集「Spotlight on Welding: Global Trade Shows, Local Shifts」と題してグローバル展示会で読む溶接産業の今と中国・米国・欧州に見る成長市場と技術の最前線をお届けする(→詳細はこちら)。無料でお読みいただける配信登録は下記フォームから。