ENEOSアメニティ「ドライアイスジャケット」 現場の声が生んだ猛暑対策 原料供給最大手のメリット活かすビジネス

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【電子版ガスメディア2026年2月3日号より抜粋】

ENEOSアメニティ「ドライアイスジャケット」
現場の声が生んだ猛暑対策
原料供給最大手のメリット活かすビジネス

 ENEOSグループの社内ベンチャー企業、ENEOSアメニティが展開する「ENEOSドライアイスジャケット」が、溶接作業を伴う工場や屋外現場などの事業所で暑熱対策として普及が進んでいる。同製品は、暑熱対策製品としての機能性に加えて、石油精製過程の副生ガスを原料とするドライアイスを冷却剤として使用しているのが特徴。副産物を再資源化することの高付加価値商品の創出と環境負荷軽減を同時に実現している。
 同製品の開発の背景には、可燃性物質を扱う製油所特有の厳しい安全制約がある。引火の危険性が高い「防爆エリア」では発火源となる電気を用いた冷却服は使用できない。
 ENEOSグループ内の石油製品製造工場にて安全衛生責任者であった宮城克行氏は防爆エリアで使用可能かつ冷却効果が高く、装着しても作業者の邪魔にならない暑熱対策用品を模索するなか、冷却能力に優れるドライアイスの特性に着目。

 そして、ドライアイス入手の簡易化とそれを活用した冷却服の製品化を目指す事業案が社内ベンチャー創出プログラム「ChallengeX」で最優秀賞を受賞。2021年度より事業化に向けた実証テストを本格的に開始した。
 実証テストではENEOSグループ製造現場の作業者約700人の声を反映し、身体の冷却と作業性の両立を追求しながら約1年間をかけドライアイスジャケットのデザインを開発した。

 24年には同製品の生産・販売と冷却源であるドライアイスの供給を行うENEOSアメニティが設立され、宮城氏が社長に就任。その後、グループ外の各企業へも本格的に販売開始し、自動車工場や物流倉庫などの様々な現場で導入が進んでいる。昨年は6月の改正労働安全衛生規則施行による企業における熱中症対策の義務化や記録的猛暑を受け、注目度が増大。導入実績は2万着を突破した。
 実際に使用しているユーザーからは「ファン付作業服など他の暑熱対策製品と比較して冷却効果が高い上に圧倒的に快適」と評価され、リピート率も高いという。

同製品は内側にドライアイスを収納し身体を冷却する構造となっており、安定した冷気が約3時間持続するのが特徴。独自開発の多層メッシュ構造が冷気を効率的に身体側へ伝える。
 冷却源のドライアイスはマイナス79度の超低温で、太い血管が通る脇の下や背中を冷却することで深部体温の上昇を抑制する。

 一般的な保冷剤や氷水と異なり作業服が湿らず、電気不使用のため静音性も高い。重量は275グラム(ドライアイス等除く)と軽量で、上部開放デザインや伸縮性により、作業者の動きを妨げない設計となっている。また、同製品のサービスは、ドライアイス販売のほかドライアイス原料の液化炭酸ガス販売と、それを使ってドライアイスを製造する装置のレンタルもパッケージ化しているのが特徴。ドライアイスの原料となる液化炭酸ガスは、主に石油精製過程で発生する副生ガスを精製・液化して生産される。石油元売国内最大手であるENEOSグループは日本最大のドライアイス原料の供給事業者であり、製油所から発生する高純度の副生成ガスを原料として供給できることが大きな強みだ。


 宮城氏は「同製品はENEOSの主力事業の一つである石油精製の過程等で発生する副生ガスを利用するため、これによって新たな環境負荷を生み出している訳ではない。むしろ事業活動で発生する副産物をドライアイスという優れたエネルギー源に変え、それを活用している点で環境負荷の軽減につながっている。資源リサイクルという点でも社会的意義のある事業だと考えている」と強調。
 ENEOSアメニティ営業部の吉川次男氏は「暑熱ストレスが高い環境下では熱中症など直接的なリスクに加えて、パフォーマンスが鈍ることでの作業効率の低下やヒューマンエラーにもつながる。確実な冷却対策は業務効率化や労働時間削減につながり、経営的な視点でも有用だ」と語る。


 なお、ドライアイスを狭い密閉場所などで使用する場合、酸欠リスクが生じる。そのため同製品には酸素濃度計のレンタルサービスも付属している。同社では、特に屋内作業での使用時に必ず装着するよう安全対策を強く呼びかけている。

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