フレッシュマン講座 -非破壊検査 編-

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フレッシュマン講座
非破壊検査 編

 本年も多くの学生諸君が、非破壊検査業ならびに関連する分野で社会人としての生活を開始された。ここではこのような方を対象として、非破壊検査に関する基礎的知識、非破壊検査における基本概念や技術的特徴、その他関連事項として、資格取得について解説する。

■非破壊検査とは
 非破壊検査とは、材料・部品・構造物などの種類にかかわらず、試験対象物を傷つけたり、分解したり、あるいは破壊したりすることなしに、それらの内部および外面の状態などを知るために行う技術である。
 物を壊して調べる破壊試験と異なり、非破壊検査では、検査結果が健全であれば、そのまま使用を継続することができることから、現代の工業社会において不可欠な技術である。

■非破壊検査の適用分野
 非破壊検査は非常に多くの分野で使われている。特に重要なプラントである原子力・火力発電所、石油精製、石油化学、ガスなどの設備はもとより、橋梁、道路、ビルなどの社会資本、鉄道、航空機、船舶、あるいはロケットなどの輸送機器、鋳造品、鍛鋼品、鋼板など種々の工業製品を対象に、様々な手法で非破壊検査が適用されている。このように安全性、健全性が確保される必要のある、あらゆる製品、構造物などに必ず適用されていると言っても過言ではない。

■非破壊検査の目的および役割
 非破壊検査を適用する目的および時期は、大きく次のように分類される。
(1)構造物および製品などに製造過程できずが発生していないか、また製品の品質が決められたレベルを満足しているかを調べる目的で使われている。
(2)一定期間の使用あるいは運転後の検査では、使用中にきずが発生、進展していないか、またそのきずにより、構造物および製品が破壊に至ることがないかを調べる目的で使われている。
 これらからも分かるように、構造物および製品の破壊による事故を防ぎ、安全を確保する手段として、非破壊検査の役割は重要である。

■非破壊検査の種類
 非破壊検査を有効に行うためには、その目的と対象物の状態に適った方法を適用することが必要である。そのため、非破壊検査手法としては多くの種類が考案され、実用化されている。図1に基本的な非破壊検査方法の種類を示す。

■図1=非破壊検査編.jpg

 図1のうち、外観試験を除くきずの検出方法の原理を図2に模式的に示す。品質の高い非破壊検査を実施するためには、その目的と対象物に合った方法を適用することが必要である。いずれの場合でも、非破壊検査を適用して何の情報を得ようとしているのかを明確にしておかなければならない。
 したがって、発生する可能性のあるきずを知り、そのきずの許容限度を明らかにした上で、確実に検出できるような試験方法と試験条件を選定する必要がある。

■図2=非破壊検査編.jpg

■非破壊検査の使い分け
 品質の高い非破壊検査を実施するためには、その目的と対象物に合った方法を適用することが必要である。
 非破壊検査技術はそれぞれ特性が異なる。きずの検出について言えば、きずの位置(表面か内部か)、形状(平面状か体積状か)、あるいは対象物の材質などにより、それぞれ適する方法が異なる。したがって非破壊検査を適用するときは、目的とするきずなどをあらかじめ明確にした上で、最適な方法を選択し、最適な条件で適用する必要がある。

■必要な資格
 非破壊検査の資格について述べる。非破壊検査を実施する技術者の資格としては、JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」に基づき、日本非破壊検査協会が実施しているものが挙げられる。
 年に2回(春・秋)行われる試験に合格し、登録することで資格を取得できる。受験するには、訓練シラバスに基づいた訓練を受けたことを証明する訓練実施記録に、視力検査証明書を添えて、受験申請する必要がある。
 レベル1およびレベル2の新規試験では、筆記の一次試験と実技の二次試験が課せられる。ともに合格した者が、一定の経験月数を満たすことで資格認証申請が可能となる。
 2022年10月時点で、登録されている資格者数は、レベル1、2および3を合わせて延べ8万6,519人に上る。その中でレベル2が6万2,402人と最も多く、現場業務の中心となっている。これ以外では、鉄筋圧接部の超音波探傷試験、建造物の鉄骨溶接部の検査など、対象物に特化した資格もあり、現場においてこれらが要求される場合もある。
 このように非破壊検査技術者となるには、まず上述した資格を取得することが第一歩となる。次に必要なことは、現場実務レベルを向上させることである。それには、手法の異なるそれぞれの非破壊検査技術に精通するとともに、それを適用する対象物(溶接部、圧延品、鍛造品および鋳造品など)について、材料、製造方法、使用方法および発生するきずなどについての十分な知識を持つことが必要である。非破壊検査は製品の品質管理あるいは構造物の健全性維持を目的として行われるものであり、その重要性はますます増加している。
 このようなたゆまぬ努力を継続するには、非破壊検査技術者として自らが行う業務が、高い社会貢献度を有するものであることをよく認識し、仕事に誇りと使命感を見出すことが原動力になると思われる。フレッシュマンにはその気持ちをずっと持ち続けて、将来の非破壊検査業界に少しでも貢献していただければと期待している。

(非破壊検査/技術本部検査技術センター兼技術監理室 篠田邦彦)
【溶接ニュース 2023年4月4日付】

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