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熱気あふれる高校生溶接コンクール (未来の溶接士たち)

溶接高校生
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(「溶接ニュース」2025年1月14日付 14面より)

高校生溶接コンクール/競技会への参加の輪は年々拡がりを見せている。
 
高校生同士で溶接技量の日本一を競い、溶接甲子園の愛称で知られる「全国選抜高校生溶接技術競技会in新居浜」は2017年の初開催から今年で8回目を数える。第8回大会は愛媛県新居浜市の日本溶接協会四国地区溶接技術検定委員会と新居浜市ものづくり産業振興センターで8月2、3日の2日間にわたって開催され、全国から選抜された20道府県の30校37人の高校生が参加した。
 
競技種目は、「被覆アーク溶接部門」(手溶接、競技時間25分)と、「炭酸ガスアーク溶接部門」(半自動溶接、競技時間15分)の2種目で、競技課題はそれぞれ溶接技能者評価試験のN-2F、SN-2F(両部門とも板厚9ミリ、下向・裏当て金なし)に準じ、外観評価と放射線透過試験、違反・不安全行為の減点で審査。被覆アーク溶接部門19人、炭酸ガス溶接部門18人による熱戦の末、被覆アーク溶接は高橋澪選手(大阪府立東淀工業高校3年)、炭酸ガス溶接は武田佳也選手(愛媛県立今治工業高校3年)が最優秀賞に輝いた。
 
最優秀賞の高橋選手は、昨年の大阪府競技会で9位、近畿地区高校生ものづくりコンテストで5位と着実に順位を上げてきた。反省点だった初層の練習の成果が出た様子で「色々な人に教えてもらい、ここまで来られた。将来は鉄道車両関係の仕事で溶接を続けたい」と笑顔を見せた。
 
同じく最優秀賞の武田選手は「緊張はあまりしなかった。裏波は良い感じだったが最終層が均一にできず1位になれる自信はなかった」と振り返り、「父が設計に携わっていることもあり、自分も造船業界で働きたい」と話した。
 
高校生が溶接日本一を目指すもう一つの檜舞台である、全国工業高等学校長協会主催の「第24回高校生ものづくりコンテスト全国大会」は    11月10日、ポリテクセンター秋田(潟上市)で開催され、今大会から初めて溶接部門が正式種目に加わった。競技課題は溶接技能者評価試験のN-2Fに準じ、被覆アーク溶接(手溶接)、中板(板厚9ミリ)の裏当て金なし下向突合せ継手の溶接とし、最終層は競技材の中央部にある指定範囲内でビードを継ぐというもの。全国9ブロックと開催県から10名の代表選手が出場し、優勝の栄誉をめぐって文字通り火花を散らした。
 
優勝者は、四国地区を勝ち抜いた藤原光希選手(今治工業機械科3年)。藤原選手は全国大会に向けた準備について「夏に参加した溶接コンクールと異なる溶接棒を使うため苦戦した。就職活動などがあり、1ヵ月程度しかまともに練習時間が取れなかったため、スラグ取りといった基礎的な部分を重点的に訓練してきた」と説明。今後の進路として既に造船事業所への就職が決まっており、「溶接を多用する造船事業に従事するため、今後も溶接技能を磨く」と優勝を機に決意を新たにしたという。
 
出場選手の全員が必ずしも溶接士を目指しているわけではないが、今大会は10人中6人が溶接事業所への就職を志望。優勝した藤原選手以外にも卒業後の進路と溶接との関わりについて話を聞いたところ、「溶接士となって働きたい。溶接の魅力は、仕上がったビードを見た時の達成感だ」「造船分野への就職が決まった。溶接技能を生かせるポイントも豊富にあると思う」「大型構造物や水門を作る企業に入り、溶接士になる。溶接の魅力は格好良いところだ。女性が溶接をしていることを驚く人も多いが、腕さえあれば性別など関係ない」などの力強い声が返ってきた。

高校生溶接コンクールで競技課題に挑む選手.JPG(高校生溶接コンクールで協議課題に挑む選手)

 
目標を持つことは技能を習熟する早道と言われるように、大会への出場、そして優勝という大きな目標が決して多くはない練習時間を経て溶接の腕前を磨く原動力となって選手らの技量の上達を促していることは言うまでもない。入賞すれば自信にもつながり、溶接事業所への就職では武器にもなる。
 
これら全国大会への予選を兼ねた高校生溶接コンクールを主催する指定機関が徐々に増えており、茨城県溶接協会は今年度から新たに実施を決め、開催に向けた準備を進めているところだ。また、コンクールを開いていない指定機関でも地区大会やブロック大会へ代表選手を送り出しているところは多く、彼らに対する溶接実技指導などを行っている。

(「溶接ニュース」2025年1月14日付 14面より)

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