ト―ヨーカネツ、溶接タンクの製造技術を水素発電に

22/08/05

 ト―ヨーカネツでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「液化水素貯槽の大型化に関する研究開発」に参画し、長年の溶接タンクの製造で培われた溶接技術や知見を生かしながら、平底円筒形の大型液化水素貯蔵タンクの商用化に向けて研究を進めている。
 今回のNEDO事業において、重要課題の一つに溶接技術の確立がある。同社が想定する液化水素貯蔵タンクの溶接技術では液化水素が入る内槽には安全性を担保するため極低温で優れた特性を持つSUS316Lを使用し、自動ティグ溶接を主要な溶接方法を適用する予定だ。
 研究において溶接技術を統括する同社の京野成利氏は「液化水素が貯蔵されるタンクではマイナス253度という環境下になり、溶接部の低温靭性を考慮するとティグ溶接で接合することが品質確保に繋がる。溶接する大部分に自動溶接を適用する想定だが、タンクを支えるためのアンカーストラップを設置する箇所など自動溶接機が入らない箇所では溶接士による溶接も必要になる」と語る。
 また、大型構造物であることから溶着速度を向上させるためにあらかじめワイヤに電流を流し、ワイヤを加熱することで時間に対する溶着量を増やすホットワイヤ法を適用することで、効率化を図っている。
 内槽は液化水素が、一般的なLNGと比較すると質量が軽く約6分の1、内圧真空圧などタンクにかかる圧力が約0・15メガパスカルと強力ではないことから大型の構造物としては比較的薄い板厚で設計されている。
 一方、内槽を守る外槽には外圧が作用するため板厚は厚くなり、炭素鋼を使用。接合方法は炭酸ガスアーク溶接やサブマージアーク溶接を適用することが想定されている。
 同社では水素以外のLNGタンクなどの極低温タンクを50年以上前から製造してきたノウハウがあり「加工、組立て、溶接といった施工に関しては、今までに培われてきた技術が応用可能で、現状難しい部分はない」と京野氏は溶接技術の確立に自信を見せる。
 また、液化水素貯蔵タンクの実用化には内槽と外槽の空間の真空状態を保つ技術の確立が必要不可欠な課題であるが、実現には「溶接技術の確立」に加えて、「真空排気システムの確立」、「内部底部への入念量算定手法の確立」と3つの重要課題を解決する必要があるという。
 今後は商用化に向けて3つの研究課題をクリアした上で、ベンチスケールプラントによる実証実験の段階に進展させていくことが目標で、同社で液化水素貯蔵タンクの研究を統括する大江知也氏は「平型の液化水素貯蔵タンクを商用化できれば温室効果ガス削減に大幅に貢献できる上に、電力確保の手段が強化され人々や社会の安全安心な暮らしを支える効果もある。是非とも商用化を目指して研究開発を進めていきたい」と抱負を語った。
 現在、安定的な電力確保に向けた新たな発電方法に関する議論が活発化しているが、2019年3月に改定された経済産業省策定の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」によると、発電事業用水素発電の本格導入開始は 2030年頃とされており、発電用の水素を多く貯蔵できる大型の液化水素貯蔵タンクは重要な社会インフラとなることが期待される。 その一方で液化水素の貯蔵タンクとして現在実用化されている球体型の容器は貯蔵量に限界がある。そのため、水素発電を安定かつ、発電能力を持つエネルギーとして活用していくためには、大容量の貯蔵に対応可能な平底円筒形の大型液化水素貯蔵タンクの製造技術が確立することが求められている。
 同社は1950年、プラント向けの溶接タンクの製造を開始し、現在までに国内外で製造したタンクは5700基を超え、LNGタンクといったクリーンエネルギーの貯蔵タンクの製作とメンテナンスにおいても業界屈指の実績を誇る。
 同社の平円筒形の液化水素貯蔵タンクの開発は2004年の東京工業大学との共同研究から構想が始まり、08年に概念設計、18年に真空断熱構造の詳細設計まで終了した。その後、19年より、実機建設に向けた課題解決のため、NEDO事業「液化水素貯槽の大型化に関する研究開発」に参画。
 現在、平底円筒形の大型液化水素貯蔵タンクの商用化を目指して研究を進めており、研究の課程で同社が発表した論文「大型液化水素タンクの開発」が21年に日本高圧技術協会の科学技術賞を受賞するなど高い注目を集めている。

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