溶接の自動化と技能向上の両立へ

22/08/03

 溶接工程における品質の標準化や生産性と精度を高めるために、溶接工程の多くを自動化している工場は少なくない。さらに、自動車工場など溶接の前後工程まで自動化を進めている工場もみられる。その一方、自動化を積極的に進めている溶接事業所でも「溶接するのは機械でも、オペレーションや管理するのは人であり、人が溶接技能や技術に精通している人がいなければ良い製品は作れない」との声が聞かれる。自動化を積極的に進める一方で、溶接教育にも力を入れる溶接事業所を取材した。

 2019年に第2工場を新築し、生産能力を大幅に増強した竹内鐵工所(山形市、竹内慎之介社長、山形県溶接協会会員)では、溶接ロボットの増強による溶接の自動化に加えて、1次加工や前加工でも自動・省力化を推進する。昨年にはH形鋼・開先スカラップ加工機と複合加工マシンを導入し、穴あけ・切断の複合加工ラインを自動化した。
 またタブレットを活用し、図面と溶接作業指示書や生産の進捗状況を社内で共有できる体制を構築するなどDX化も推進し、働きやすい環境が整備している。
 その一方、竹内社長は「当社ではロボット溶接の適用が拡大し、溶接工程の生産性は向上しているが、溶接士が溶接する機会は減っている。溶接の自動化が進んでも、狭あい部の溶接などでは溶接士が活躍する上に、製品の大きさや板厚によっては溶接士が作業したほうが生産性も高いケースもあるが、溶接技能は経験がなければ鍛えられない。そのため、ベテランの社員を中心に、このままでは技能が失われてしまう危機感があった」と語る。
 このような中、同社では溶接士が主体となり、自社内での溶接技能伝承と技術向上を目指す「溶接研究会」が発足。「溶接研究会」では溶接技能向上に向けた練習会や業務上の改善に向けた意見交換などを溶接士が自発的に実施しており、練習会では厚板の溶接でパス数が多くなった際の盛り方、隅肉溶接の回し溶接など鉄骨の溶接に必要な技能を実践的に学ぶ。
 また、技能を高めるとともに、自社の技量を客観的に比較することを目的に今年4月に行われた山形県溶接競技会(山形県溶接協会主催)へ同社からは初めて溶接士が参加した。
 竹内社長は「働きやすい環境を整備したことで社員のモチベーションも高まり、社員が自発的に立ち上げる形で『溶接研究会』は誕生した。自動・省力化は技能教育を充実するためにも必要なのではないか」と指摘する。
 半導体関連の配管工事と関連設備の製作などを手掛ける汎高圧工業(埼玉県蕨市、今井孝志社長)は約40年前から自動溶接機の導入を進めており、現在は70台以上の自動溶接機が稼働する。
 同社ではステレンス鋼管を中心に比較的薄肉の鋼管をティグ溶接する。半導体関連産業で使用される配管には高い清浄性に加えて、毒性や可燃性の高いガスに使用されることから、パーティクルの発生や焼けの許されない高品位な安定した溶接が求められる。このため自動溶接機を適用するケース多く、同社では約7割の溶接工程を自動化している。
 一方、同社の溶接技術者はアーク溶接特別教育を受講し、JIS溶接技能者評価試験の専門級「TN?P」を取得する必要がある。その上で、メーカーが指導する自動溶接認定試験に合格しなければ自動溶接機のオペレーションに携わることはできない。そのため、同社に入社した社員はOJTなどで先輩や上司の指導を受け、溶接に関する技能や技術を徹底的に学ぶ。
 自動溶接機のオペレーションに携わる条件として溶接評価試験の専門級の合格を必須とする理由を今井社長は「自動溶接機は電源を入れれば誰でも簡単に溶接できるように見えるが実際はそうではない。その日の温度と湿度に加えて、溶接電源や溶接ヘッド自体の癖を見極めた上で、溶接条件を設定する技術が求められる。そのためには配管溶接の技能者評価試験に合格できるレベルの技能と知識が必要」と語る。

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