生産性向上、コスト削減・溶接事業所の取り組み

21/11/21

 溶接事業所は独自の創意工夫や改善を重ねて生産性向上やコスト削減に取り組んでいる。溶接機や周辺装置のカスタマイズや生産工程の見直しなどを通じて、自社の製品や生産量に対応させることが成功のカギとなるためだ。溶接事業所が自社の製造工程に合わせて独自に進めている様々な取り組みを追った。
 ボイラ機器製造の三浦マニファクチャリング(愛媛県松山市)は、溶接ロボットを用いた生産工程の中で、溶接ワイヤ表面のめっきが剥離し、ケーブル内にとどまることで溶接不良が生じることが課題となっていた。解決する手段としてケーブル内のワイヤ剥離を自動で回収する装置を開発。それまで不良が発生した時にロボットを停止させて行っていたケーブル内の清掃が不要となった。「対策前に月に一回約4時間かかっていた清掃がゼロになった」(同社)。年間にすると約30時間の時間短縮につながり、現在グループ会社への横展開も計画している。
 製薬や食品プラントのサニタリー配管を中心に手がける関本管工(静岡県島田市)は、配管の枝管部を自動で円周溶接する「ローネックウェルダー」を自社で開発した。「そもそも自社でジグや装置を開発する自由な社風があった」(同社・関本雅輔社長)という同社が、試行錯誤をしながら開発した装置は、2本の配管を固定し、内部にシールドガスを充填したのちティグ溶接を自動で行うという自社の生産品に最適化した自動溶接装置。内面にわずかな穴も許されないという品質を満たし、安定した溶接品質を確保する。同社ではパイプの寸法合わせから切断までが簡単にできる「自動寸法出し切断機」も開発するなど多くの自社開発製品を活用しながら売り上げ増を続け、今年に入り新工場も建設するなど成長を続けている。
 微細なティグ溶接加工を得意とするハイド(大阪府八尾市)は、溶融池を見ながら指でダイヤルを回して電流値を調整する装置「ティグコン」(特許取得済)を開発し横山英文社長自らトーチを握り自社の加工に生かしている。横山社長はコンマ秒単位のアーク出力時間をコントロールする新型機も開発。「高さを0・1ミリ上げたい」「0・3ミリの針金をクロスして溶接してほしい」といった難溶接の依頼にも応える。開発に用いたCADもすべてインターネットで独学で学んだという横山社長。自らの本業は「ティグ溶接士」と自認し、液体が入ったままのスチール缶の底を中身がこぼれないように溶かす練習をするなど腕を磨いている。
 在籍する溶接士が設計から顧客提案、その後ろの溶接工程まですべて対応する「完全な個人プレー」をすることで業務の効率化と差別化を図っているのが工場設備や軽量鉄骨加工を行うMAKINO(静岡県袋井市)。一人の溶接士が一貫して対応することで「情報の把握漏れがなく、効率的な施工の段取りを各自で見つけることができる。また、すべて一人でできるだけでは案件が継続しない。溶接技術だけは確かなものでなくてはならない」(牧野弘明社長)と溶接のスペシャリストとしての強化も継続する。
 発電プラント向け大型装置の製造を主業務とする楯菱電産(兵庫県稲美町、楯川賢三郎社長)は製缶溶接で発生する溶接ひずみの抑制のため、専用ジグの開発や大型水圧プレス機を用いた曲げ加工によるひずみ取りの技術を融合させることで厚板の大型製品のひずみを抑える溶接を実現する。製缶の溶接用には円の形をした蓋状のジグを作成。ジグには取手があり、蓋を押しながら溶接することで製品の円形を保つことができる。H鋼を用いた大型のレールなどの溶接では自社製の回転する円形のジグを使用することで溶接しやすい姿勢で溶接ができる。
 専用ジグの構想には楯川社長自らアイデアを出すこともあるという。こうした取り組みに対し「溶接は当社の生命線となるコア技術。ひずみ対策など溶接品質を高める取り組みは経営陣も含め全社一丸となって実施している」と吉原安紀副社長は語る。

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