溶接の環境改善活発化

21/09/03

安全の確保は製造業において欠かすことのできない課題であり、溶接事業所においても活発な取り組みが進められている。ただ、安全確保に取り組むことで、生産の効率化や品質の向上などのシナジー効果を生み出すこともあるようだ。現在、溶接事業所で大きな課題の一つになっているのが「労働安全衛生法施行令、特別科学物質障害予防規則(特化則)等の改正」への対応。これにともなう溶接ヒュームの濃度測定結果に応じて、溶接事業者は換気装置の風量増加のほか、必要な措置が求められる。3社の事例を紹介する。
 Hグレート鉄骨ファブであるカガヤ(岩手県盛岡市、加賀谷浩一社長)は溶接の品質安定と作業の効率化のためにポジショナーを活用。具体的には、上向姿勢での溶接や、横向姿勢での溶接は、難易度が高く多くの作業時間を必要とするため、ポジショナーで構造を動かすことで溶接士が溶接しやすい下向き体勢で溶接を行えるようにすることで品質の安定および作業効率の向上を図る。
 つまり、下向溶接によって作業効率が上がり、溶接時間が短縮されれば結果として、溶接士がばく露する溶接ヒューム量が減少する可能性があるわけだ。
 同社の加賀谷社長は「溶接姿勢で見ると上向、立向、横向、下向きの中では下向姿勢が溶接ヒュームに触れる姿勢であり、濃度も濃く出る」という見解を述べる。その上で「当社は10月に濃度測定を行う予定だが、実測でどの程度まで溶接ヒュームの濃度が出るか確認したうえで対応を考えていく必要がある」とする。
 Mグレード鉄骨ファブリケーターのコイズミ(神奈川県秦野市、小泉学社長)は、特化則第37条の「休憩室の設置」への対応を生かして事業の効率化や拡大を狙う。同社では今まで、溶接工場とは少し離れた場所にある本社部分の1部屋を休憩室として使用してきたが、新たに工場の一角に休憩室を設置した。プレハブ製のため工場の作業内容に応じて比較的簡単に移動させることも可能だ。
 これにより、例えば打合せなどの度に本社スペースと工場スペースを従業員が行き来する必要がなくなった。また、他社との打合せなども、窓の外で行われる作業を眺めながら進めることができるようになり、社内外で情報共有がスムーズになったという。
 同社ではプレハブ製休憩室を利用して、溶接工場をテーマパークにするというBtoCビジネス「アイアン・プラネット・プロジェクト」に参画。休日になると近隣から溶接に興味を持つ人が体験に訪れるようになり、溶接作業を眺めながら準備して自身も溶接を楽しむことができるようになった。
 東日本旅客鉄道グループで鉄道車両を製造する総合車両製作所(横浜市、西山隆雄社長)の横浜事業所では、地面を這う多くのコードやケーブルを天井に集めた。これは特化則第38条の21条9項である「掃除等の実施」の場面で有用だ。同項目では毎日1回以上の掃除を義務づけているため、同社ではコード・ケーブルを天井に集めることで容易に掃除できる環境を整えた。
 同事業所で車両の土台を製造する台車課では、約9?32?の厚鋼板を被覆アーク溶接や半自動溶接で接合しているため、多くの溶接ヒュームが発生している。一方で、1000人を超える社員が在籍し、日々鉄道車両の製造に関わるため、適切に掃除を行い溶接ヒュームが人体に入りにくい作業環境の整備に注力している。

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