求められる溶接人口、カギは早期の人事育成と人材の多様化

21/07/08

 溶接士不足が全国的に続いている。それを示すように溶接関連職種の直近の新規求人倍率は3・26倍と高い値を示す。JIS溶接技能者認証試験の2020年度受験者はコロナ禍で試験中止期間があったにも関わらず10万人台の水準を維持するなど、産業界からの溶接士確保に向けた要求は高い。溶接人口拡大に向け、一般への啓蒙活動や効率的は技能教育方法の確立など様々な取り組みが行われている。
 製造業全般、なかでも建築分野を中心に溶接士不足が深刻化している。コロナ禍の影響もあり、建築着工面積は減少傾向にあるが、技量資格を持った溶接士の需要や有効求人倍率は高い値を示す。
 厚生労働省まとめによる「金属材料製造、金属加工、金属溶接・溶断」職種の新規求人倍率(パートを含む常用)は直近の21年4月は3・26倍と昨年4月の2・52倍と比較して人手不足の傾向が上昇している。
 実質的に溶接士不足の受け皿となっていた外国人技能実習生もコロナ禍での入国規制により新規受験者が減少したことも影響をしたとみられる。
 日本溶接協会がまとめた2020年3―21年4月(年度ベース)の溶接技能者認証(WO)は実技試験10万466人(前期比10・2パーセント減)、合格者数7万7840人(同9・6%パーセント)となった。新規の受験を示す学科受験者数は1万8252人(前期比17・8%パーセント)、合格者数1万5110人(同17・2パーセント減)だった。 
 地区別にみると、最も実技受験者数が多いのは東部地区の2万5156人、次いで関西1万7082人、九州1万4893人、中部1万1941人、東北9274人、中国8827人、北陸4699人、四国4308人、北海道4286人と続く。
 日溶協は溶接技能教育を注力事業として方針に掲げ、各種の教育事業を各地区指定機関と連携して実施する。
 新規の学科試験受験者を対象とした講習会では、全国の指定機関と連携した講習会を実施する。専用のテキストを利用したカリキュラムでJIS試験の合格率向上を目指す。受講者からは「必要な点だけを分かりやすく解説をしてくれるため理解がしやすい」と好評を得ている。確認試験で一定の点数をとることでJIS学科試験が免除となるなど、企業にとってもメリットが大きい。また昨年度より就職氷河期世代を対象とした短期資格取得カリキュラムも展開するなど、溶接人口拡大に向けた対策を進める。
◇溶接士の多様化がカギ
 女性溶接士をはじめとした人材の多様化もカギとなる。男女別の実技受験者数を見ると2020年度は男性9万9580人に対し、女性は886人、女性構成比率は0・89パーセントだった。1パーセント満たない割合ではあるものの、2010年度の女性受験者数は327人で構成比率は0・31パーセントだったことから徐々に増加傾向にはある。
 溶接現場で活躍する女性溶接士からは「溶接は資格職のため、正社員にも就きやすく安定したところが魅力。技能向上の努力の成果が自分の評価にもつながる」と声が聞かれる。
 日溶協や全国鐵構工業協会、鉄骨建設業協会では女性入職者の拡大に向け活動を展開。ホームページ上で「溶接女子会」「鉄骨Female」を運営し、建築鉄骨やプラントなど様々な業種で活躍する女性溶接士の声や資格取得に向けた情報を提供している。
 Mグレードの鉄骨ファブリケーター、石山建設工業(茨城県河内町)では、女性溶接士や外国人技能実習生が鉄骨部材の溶接で活躍する。「女性は地元の工業高校からの見学会が入社のきっかけとなった。ベトナムからの技能実習生は職場に早くなじめるよう社内イベントなどで交流を図った。多様な人材が入社することで職場が明るくなった」(同社)と効果を図る。
 高崎産業技術専門校の小池千恵子さんは、群馬県内では初の溶接職業訓練指導員として活躍する。自身も同校の出身の小池さんは、「溶接が好きだという熱意をもって人に教える姿勢に接したことで、自分自身も溶接の素晴らしさを人に伝える仕事に就きたいと思うようになった」と語り、次世代の溶接士育成に向け熱意をもって指導に日々あたっている。

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