中堅溶接事業者のDX、工程の「見える化」がカギに

21/06/01

 未来の産業界を支える技術として高い注目を集めるDX(デジタルトランスフォーメーション=最新のデジタル技術を駆使した、デジタル化時代に対応するための企業変革)。しかし、昨年末の経済産業省の「DXレポート2」によると、国内企業のDX着手割合は5%程度であり、特にデジタル化が進みにくいとされる製造業者は5%満たないことが想定される。その一方、中堅規模でありながら積極的にDX化を進める溶接事業所もみられる。DXによって「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何をしたか」など、いわゆる生産工程の「見える化」を図ることで成果をあげる3社の取り組みを紹介する。
 ステンレス、アルミ、軟鋼など、幅広い金属の溶接、組み立て、曲げ加工などを手がけているベルテクネ(福岡県須恵町、前田努社長)は、溶接業務に対して、誰が、どの素材を、どれだけの時間を費やして、何円の売上・利益になっているのかを一元管理するITシステムを導入した。2010年に見える化への取組みを開始し、システムをカスタマイズしながら同取組みを突き詰めていった。これにより「受注案件の優先順位」が感覚ではなく、コスト、時間、マンパワーなど独自の基準として定まったという。その結果、同社の売上は1・6倍になり、収益率は5倍にまで上昇した。
 産業機械や医療用機械向けのステレンス製筐体および部品などを、ティグ溶接やレーザ加工などで生産する精密板金加工業のフジムラ製作所(埼玉県川口市、藤村智広社長)は、全従業員にタブレットを支給する。
 これにより、例えば溶接作業指示書にあるバーコードを溶接士が溶接の着手前、中断、再開、完了後などにタブレットのカメラで読み取ることで、誰が、どの製品を、どれぐらいの時間を使って溶接しているかなどの情報を社内のネットワークによって共有・蓄積し、工程管理に反映する。
 特に、同社は本社工場のほかに2ヵ所の生産拠点を持つため、溶接士などが入力したデータは社内ネットワークを通して蓄積・共有化され、全ての工程の進捗状況が社内ネットワークを通して繋がり、各工程ごとに設置した大型モニターによって、どこの工程においても詳細な進捗状況を把握することができる「見える化」を実現。工程における問題点や課題をいち早く把握するなど、スムーズな工程管理を可能にした。
 半導体装置部品における精密板金・溶接加工を生業とする小林製作所(石川県白山市、小林靖典社長)は、同社の溶接業務の生産性を爆発的に加速させたIoTカメラシステムの「Sopak?C」を開発。同カメラシステムは記録性と検索性に強みを持っており、動画の状態ではなく静止画をJPEGのコマ割り状態で保管する。データ容量が軽く、検索性が抜群に高いのが特徴だ。
 「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何をしているか」の把握はもちろん、例えばワンクリックでコマ割り画像、製品情報などが表示されるため、「年間1個の小ロット受注のためマニュアルを作っていない製品に対する作業」であっても作業手順を正確に把握できる。
 業務を受注したタイミングで適任な人物を選択し、製造工程がスケジューリングされていく独自システムと、同カメラシステムの併用により同社の溶接業務は3割以上の生産性向上がみられたという。
 同3社のように、溶接においてもDXに対する事例は少しずつ増えてきているが、本来DXとは、既存技術にデジタルの力をくわえて事業をトランスフォーム(変換する)ことを意味している。
 トヨタが取り組む、従来の自動車製造技術とデジタルの力で「人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報で繋がる街をつくる(ウーブン・シティ・プロジェクト)」などのように、事業変換していくことを目的とされていることを忘れてはいけない。事業変換の入口として見える化への着手が始まった溶接事業者のDX化への道のりは長い。

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