万全な感染症対策 16都府県高校生溶接競技会開く

21/02/15

 昨年から今年にかけて宮城、東京、大阪、福岡など計16の都府県で大会が開かれるなど、高校生溶接コンクールの開催が活発化している。コロナ禍であるため3密を避けることはもちろん、開会式を取りやめて競技だけにしたり、参加者も選手と審査員だけの必要最低限に絞るなど万全の感染防止策をとっての開催となる。全国規模のコンクールも開催が予定される中、各地の高校生の練習にも熱が入る。コンクールの開催によって、地元企業の若く優秀な人材確保への期待も高まる中、最近の溶接コンクールの取り組みを追った。
◇全国に広がり見せる
 全国に先駆けて高校生コンクールが盛んな九州地区では「九州地区高校生溶接競技会」をこれまでに12回開催している。  
 例年11月に実施の九州・沖縄大会はコロナ禍の影響で中止となったが、福岡県溶接協会は昨年9月に県コンクールを開催。例年よりは少ないながら県内の10校から女子7人を含む58人が出場するなど、九州地区の溶接熱の高さを見せた。
 愛知県では通常の競技部門の他、アート部門を実施する。芸術点と技術点でその出来栄えを競い「年々その作品レベルも高くなっている」との評価を得ている。
 関東・甲信越地区では2010年に東京で開催した国際ウエルディングショー(主催:日本溶接協会、産報出版)の特設会場で第1回関東甲信越高校生溶接コンクールが開かれ以降昨年まで、神戸製鋼所藤沢事業所などを会場に毎年開催されている。

◇出場選手が活躍も
 神奈川県立平塚工科高校で溶接を指導する水野寧々教諭は、自身も高校時代に神奈川県のコンクールに出場した溶接女子。大会出場が今の道に進むきっかけとなった。水野教諭は「生徒には誰にも負けない好きなものを見つけて欲しい。自分の場合は溶接だった」との思いで生徒を指導する。

◇全国大会への道筋
 2014年の第5回関東甲信越大会では、全国選抜コンクールが併催された。また17年には造船業の盛んな愛媛県新居浜市で市や四国地区の日溶協指定機関が中心となり「全国選抜高校生溶接技術競技会in 新居浜」が開催され、全国大会に向けた気運が高まりだした。
 そして全国の工業高校生が一堂に集まり技術と技能を競い合う「高校生ものづくりコンテスト全国大会」(主催・全国工業高等学校長協会)に溶接種目が新たに公開競技として採用が決定。昨年11月の大会はコロナの影響で中止となったが今年の開催に向け、主催・関係者が調整を進めている。日本溶接協会は事業活動方針の中で、高校生ものづくりコンテストや、予選の位置づけを果たす全国の地区大会への支援を掲げる。
 産業界や関連団体からの支援もはじまっている。昨年度から溶接接合工学振興会(野本敏治理事長)は主に工業高校を対象にした溶接機の助成事業を創設。昨年10月に第1回の寄附校11校を決定した。想定を大きく上回る全国からの応募があり、野本理事長は「申請時のアンケートでも金銭的な問題で溶接機を導入できないという声が多かった。今後も継続をして溶接の普及に努める」と方針を示す。
 今回のコロナ禍においての高校生コンクールの開催は主催者や大会を支える関係者の苦労も多い。「何度もチャンスがある大人と違って、高校生活一回きりの経験となる子もいる」「練習成果の疲労の場として何とかして開催してあげたかった」(都内大会関係者)との思いが支えている。

◇将来の活躍に期待
 国内では溶接士の人材不足が続く。有効求人倍率は他の製造職種と比較しても高い。さらに熟練溶接士の高齢化もすすみ、若手人材の育成は喫緊の課題となっている。
 溶接は未経験者には「とっつきにくい。怖そう」というイメージが持たれがちだが、一度経験すると「遮光面越しに鉄が溶けて固まる様子に魅了された」と語る者が少なくない。
 実際、高校生コンクールを通して溶接を学んだ高校生からは「溶接をもっとやってみたい」「(上位入賞できるぐらいに)うまくなりたい」などの溶接に対する積極的なコメントが聞かれるようになった。中には「これまで意識していなかったが、溶接も就職先の一つに考えるようになった」とする頼もしい言葉も聞かれるようになり、コンクールを経験した高校生が溶接関係に就職し、各地の溶接協会が主催する社会人を対象にした溶接競技会に出場するような場面も見られるようになってきた。
 社会人の競技会を3月頃に開催を予定する指定機関もみられるようになり、コロナ禍収束後は高校生コンクールを含めて、溶接競技会の開催が活発化しそうだ。

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