重工大手、水素など新分野に活路・変化の基盤に溶接技術

21/01/05

 日本の重工大手は2021年、新分野開拓へ大きく舵を切る。ここ数年は世界的な航空機需要の高まりを追い風に航空機部品やエンジンの製造に注力してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに状況は一変。航空機の需要がコロナ前に戻るには3、4年かかるとの見方が大勢を占めるなか、各社は従来にないスピード感をもって変化を遂げようとしている。その変化の後ろ盾となる基盤技術の一つが溶接である。
 世界中で人の移動が制限されて航空機の需要が大幅に落ち込み、各社の業績はたちまち厳しくなった。主力の航空機部門の先行きが見通せない中、各社ともこれまでの主力とは大きく異なる分野に活路を見いだそうとしている。
 三菱重工業が成長エンジンに位置付けるのが「エナジートランジション」と「モビリティー等の新領域」だ。主力のガスタービンは現在、天然ガスを使用するが、水素を混焼すれば二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に減らせる。将来は水素だけで燃やすタービンの実用化を目指す。またCO2回収技術などグループが総合的に持つ技術を横断で活用し、50年にカーボンニュートラル(実質ゼロ)を目指す。
 このほか新分野として注目している事業の一つが、コールドチェーンと呼ばれる低温状態を維持した物流のシステムをつくる事業。食品のほか、ワクチンの品質を維持する医薬品の低温管理でも需要が高まっている。人工知能(AI)などを活用したきめの細かい温度管理やより効率的にモノを運ぶ物流システムをつくり、国内外で展開したいとしている。
 川崎重工業は今後注力するフィールドとして、?安全安心リモート社会、?近未来モビリティー(人・モノの移動を変革)、?エネルギー・環境ソリューションの三つを掲げる。
安全安心リモート社会については、ロボット技術を核として、遠隔手術や自動PCR検査等の医療分野への進出を手始めに、今後のリモート社会に対応するビジネスを強化する。手術ロボットの指先である鉗子(かんし)の組み立てではマイクロ溶接が重要な役割を果たす。
近未来モビリティーの機体構造部材については溶接による組立てを検討している。またエネルギー・環境ソリューションでは、クリーンエネルギーの切り札は水素と捉え、水素利用に伴う溶接技術の研究開発がより重要性を増す。
 今後水素を扱うインフラや機器の増加が見込まれるなか、超高圧の水素ガスや極低温の液体水素に対する金属の挙動などは未解明の部分が多く、水素社会の実現に向け、研究を本格化していく。
 IHIは20年度から「プロジェクトChange」のテーマを掲げ、会社を大きく変える方向性を打ち出した。成長事業の再定義として、?カーボンソリューション?航空輸送システム?保全・防災・減災――の3つの注力分野を設定した。
カーボンソリューションについては、エネルギーと産業機械の分野で脱CO2と地産・地消インフラを実現する。燃やしてもCO2が出ないアンモニアに注目し、天然ガスと混ぜて火力発電の燃料にすれば、CO2の排出量を大きく減らすことができるとして、新たな発電プラントの開発に乗り出す。
 いずれの分野もDX(デジタルトランスフォーメーション)がキーワードであり、AI(人工知能)やビッグデータなどの活用を見込む。
「溶接に関してはこれまで、DXと親和性が良くないと思う部分もあったが、実は溶接こそ総合化技術であり、技術の横通しが不可欠で、その点でDXは有効な手段であると考える。溶接技術のDXに向けて、学協会活動も含め、様々な関連分野あるいは異業種との交流を推進していく方針である」(関係者)

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