コイズミ、Mグレードの生き残り戦略

20/11/13

 昨今の建築業界は先行きが予想できない状況にあり、全国的に案件は減少傾向にある。案件数が減少すると、少ない案件を獲得するために、汎用的な鉄骨の溶接加工に企業が集まり受注単価が下落する。汎用的な鉄骨の溶接加工が薄利多売化することで影響を受けるのは鉄工所で、特に中小のファブリケータには深刻な問題だ。神奈川県秦野市にあるMグレードファブリケータのコイズミ(小泉学社長、神奈川県溶接協会会員)は大きな景気の波を「選択と集中」で乗り切るという。同社の生き残り戦略を取材した。
 汎用鉄骨の受注単価の下落する可能性があるため、当社が注目しているのは「設計からの一環受注」と「メッキ加工」だ。先代から会社を継ぐまで私は建築事務所で勤務していたため、設計の知識があり、設計段階からの一括受注ならばコスト競争を避けることができる。次に、神奈川県は海に面しているため、塩害を出さないために「溶融亜鉛メッキ用の鉄鋼」を製造する技術が強みになると、判断して注力するようになった。
 メッキを施すためには金属製の構造物を500度以上の酸に浸ける工程が必要だ。そのため、高温に浸けることでの溶接部分ひずみのを避けること、酸が溜まらないことを目的に、鉄骨に穴を空けたり、あえて溶接箇所を塞ぎきらずに残すように加工する。メッキ加工は完全に数値化されてはいないジャンルのため、技能者の勘所が必要で、受注単価も汎用鉄骨よりは高い。現在当社では鉄骨の案件が売上の6割を占めており、メッキ用鉄鋼はそのうち半分を占めるまで成長した。
 次に課題となるのが技能者不足だ。いかに高単価化が成功しても、従業員数10人の当社では、例えば溶接士が風邪で休みとそのまま納品の遅れに繋がりかねない。しかしSグレードやHグレードと比較すると10人規模のMグレードに求職者は集まりずらい。そこで当社では「安価に雇用できる外国人」や「既に技能を身につけた若い日本人」など、事業者が集まる人物像に対象を絞らずに求職者を探している。
 具体的には、日本語の情報だけに頼らずに、スペイン語やポルトガル語で、永住権を持っている外国人求職者を見つけて雇用した。たまたまスペイン語を理解できるスタッフが在籍していたのは幸運だが、丁寧にコミュニケーションを取れば溶接資格と永住権を持った外国人を雇用することは実現可能であり、デメリットも少ない。当社では2人のボリビア人溶接士を雇用している。
 当社が受注する案件は大別すると3通りがあり、大手ゼネコン関連の案件(孫請け・ひ孫請けも含む)、商社からの案件、近隣企業と協力して取組む案件だ。特徴として、大手ゼネコンの傘下として案件を受注すると、規模が大きいため数ヶ月?数年単位で持続するため経営が安定しやすい。商社の案件は利益率は劣るが「溶接加工だけ」など条件を決めておけば定期的な受注も可能になる。そして、近隣企業と協力して取り組む案件は利益率が高い一方で数が少ない。しかし当社が1番大切にしているのは近隣企業と協力する案件だ。
 先代より大切にしてきた近隣企業とのつながりが、連絡ツールの進化もあり華開いた。例えば関東以外の案件であっても助け合いで進行することもできる。世間では未曾有のポンデミックなどと呼ばれているが、一つ一つ出来ること見極めて選択し、解決していきたい。

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