川崎製作所=生き残る町工場の戦略

20/10/14

溶接に限らず、昨今のコロナ禍で町工場の倒産を頻繁に耳にする。中でも大手メーカーの下請け・孫請けとして案件を獲得していた場合、大手からの受注がストップして売上を大きく落としている町工場は多い。そんな中、東京・三鷹市にある川崎製作所では、商社やメーカーから受託した製品を工場で製造するスペシャリスト川崎武夫社長と、現地での製造・加工を得意とするアルミ溶接のスペシャリストである技術営業部長の川崎雄一朗氏が軸となり販路を広げている。全国的に下降傾向の町工場が多い中、「新規案件で手が回らない」という案件獲得の秘訣を川崎雄一朗営業部長に訪ねた。
 当社で代表を務める父(川崎武夫社長)は工場での溶接業務をはじめ精密板金を生業としている。近隣企業との繋がりも強く技術的な相談に乗っている姿を子供の頃から見てきて、「何故、父のように工場での業務ではなく、より過酷な現場での案件を積極的に獲得しているのか」と聞かれることも多い。しかし実際は、積極的に現場溶接などの案件を獲得しているわけではなく、現場案件をこなした評判が口込みで広がり、参画している企業も少ないため受注が絶えなくなったのだ。
 現場で主に使用する溶接技法はティグ溶接と炭酸ガスアーク半自動溶接だ。通常100ボルトが基準である日本で、コンセントから電気を供給すると、満足に現場溶接を行う電力が確保できない。当社では業務用の自動車に電源設備を搭載して、どこでも200ボルトの電源で溶接を行うことができるため、現場溶接での品質担保に繋がっている。
 また現場作業では、不安定な体勢で溶接を行うことが多い点や、風でシールドガスが流れて溶接が失敗するリスク、雨が降れば感電のリスクなど、多くのリスクがあり難しい。中でも熱伝導の高いアルミの薄板は、鋼板に熱入れしてから加工するなどの知識と、ティグ溶接で使用するアルゴンガスが流れないための風よけの設置など経験値が必要だ。
 アルミの現場溶接は難易度が高いため参画企業が圧倒的に少ない。一方で高級車をはじめ、多くの製品にアルミは採用されているため、現場でのアルミ溶接は他社と差別化に繋がった理由の一つだろう。事実、工場に送ると高額になるため放置されてきた大型アルミ製品の修理依頼は絶えず、ユニークな物では小中学校のサッカーゴールやバスケットゴール、スーパーに置いてある大型カートなどの案件にも着手した。それぞれゴールは約50個、大型カートは約800個を溶接で修理した経験がある。
 当社では溶接の後工程である塗装も引き受けるため、現場工事ながら一貫した対応が可能だ。溶接に関わらず、行って現場で対応できる幅が増えれば他社との価格競争に巻き込まれることは少ない。WEBやSNSの環境が充実するとともに、アメリカやグアムからレース車などの改造・専用部品製作などの依頼も舞い込むようにもなった。
 少人数・小規模の町工場では、先代と同じ顧客と業務を引継ぐだけでは、経営が難しくなっていくだろう。しかし、工場の中だけで仕事していた時には想像もしなかったユニークな困り事や案件が、思いの他、外に出ると身近に転がっている。当社が初めて現場での案件を受けたのも趣味を通じた友人からの依頼だ。例えば私が10代の頃に当社とはない塗装屋で働いた経験が、現在では当社の受注案件に幅を持たせたように、将来的に何が必要になるかはわからないため、「当社ではや出来ません」と言わずに様々な業務に触れていくことで活路は広がっていくのではないだろうか。

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