溶接工場がPCR検査に貢献、旭エンジニアリング

20/10/07

 コロナ禍の中、医療機関は検査センターを院内から隔離する必要性に迫られている。そこで注目を集めているのが、静岡県袋井市でプラント設備の施工や溶接加工を生業とする旭エンジニアリング(西野正和社長)が開発した、新型コロナウイルス感染拡大の対策に特化したトレーラハウス型のウォークスルー方式によるPCR検査センターだ。同社は5月にこのセンターを浜松市に無償提供したことが話題になったが、このほど同PCR検査センターの課題を解決したニューモデルを開発。設置時間を48時間削減し、開設コストを約100万円削減した新型を10月中に実装する予定だ。
 同トレーラーハウスは車体や骨組みに半自動アーク溶接が使用されている。車体でありながら、骨組みの上に建築物を建てるように製造するのが特徴だ。使用する素材は、汎用性が高いSS400となる。
 同トレーラーハウスを製造した同社グループの溶接士である萩間大樹氏は「一般的に建築分野の溶接は大入熱で溶接するため、センチ単位のずれが生じてしまう。しかし、トレーラハウスは、車体製造の技術が求められるため、ミリ単位の作業が求められるため、工夫が必要だった。具体的には、急冷を抑えるために溶接後にも加熱しながら徐々に鉄を冷やしていき、治具で伸ばしながら成形した。また、トレーラーハウスは高さが約2・4メートルあるため高所で不安定な足場で溶接作業を行うのは難しい」と話す。
 また、今回採用したウォークスルー方式は、外部から遮断された車内で医師が手を出し検体を採取するもので、防護服の着用が必要ないことが特徴。PCR検査センターは空調システムにより、車内の気圧を高めることで空気を社外に押し出し、ウイルスが車内に侵入することを阻止する仕組みとなっている。トレーラーハウスであるため自由に移動できるということも大きな強みだ。
 しかし、5月に同社が開発したモデルには大きく2点の課題があった。一つ目はトレーラーハウスは車輪の上に建造物を乗せるため車高が高く、停車後にトレーラーハウスの周囲に足場を組まないと、外から受付や検査を受けることができない点。足場を組むには2日程度の時間が必要だ。
 二つ目は対応電源が200ボルトであること。日本は一般的にコンセントが100ボルトで設定されているため、電線から直接電力を供給するための工事が必要になる。足場設置と電気工事費用で100万円程度のコストがかかっていた。新型は、車高を下げるとともに100ボルトの電源設備に対応。多くても2人居ればPCR検査が可能なことがわかったため、長さ3・6?、幅2・5?と一般車と比較しても小回りが利くサイズで開発を行った。
 この他、新型では、新型コロナウイルスと類似したA型インフルエンザウイルスで滅菌効力が認められた漆喰の壁や、入口部分での紫外線照射による滅菌を行っているため、よりウイルス対策も強化されている。
 同社は、10月中に新型PCR検査センターのトレーラーハウスを複数の自治体に4台無償で提供する予定だ。同製品がコロナ対策に対する国の補助金制度に採択されたため実現した。大手医療機器メーカーなどに混じって、溶接町工場が補助の対象になることも珍しいケースであるため、今後も目が離せない。

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