菊川工業、高輪ゲートウェイ駅の溶接 和をテーマに

20/07/06

 各種サービスロボットやデジタルサイネージの導入など、未来に向けた実験場として話題を集め、JR東日本京浜東北線・山手線の停車駅として今年3月に開業したばかりの高輪ゲートウェイ駅(東京・港区)。折り紙をイメージしたステンレス製の大屋根も高い注目を集めているが、その施工には、デザイン性の高い溶接・板金加工で高い実績を持つ菊川工業(東京都墨田区、宇津野嘉彦社長)が参画する。同社に水密性を確保するために建築現場でジョイント部を水密溶接(全周溶接)したという雨樋の溶接など、同駅舎のステンレス製大屋根の溶接施工について聞いた。
同社は、大屋根の樋および笠木・水切・幕板などの金属製品を担当しており、1・5ミリのステンレス曲げ加工で製造される。人の目に触れるため、基本的には両面可視部扱いで、下地も含め白系統のフッ素樹脂焼付塗装で仕上げる。中でも幅400ミリの樋は、水密確保のため、ボルト締めや接着ではなく、建築現場で水密溶接でジョイントし、施工はビスで行った。少しでも現場の溶接箇所を減らすために、割付は6?と従来品と比べて長い。
 現場溶接では、工場製造と違い不安定な体勢で難溶接材のステンレスを溶接しなければいけない。また、複数の企業が出入りしている現場だからこそ、品質確保はもちろん、溶接で必ず出てしまう火花など、周囲に対する配慮が必要となる。
 比較的火花が発生しにくいティグ溶接を使用し、持ち込んだ溶接機を延長コードで伸ばして使用する。長い割付のため必ず2人以上で溶接作業を行うことになる。つまり複数の溶接技能者による協力態勢を敷く必要があるため、現場ごとに1人は熟練溶接士が配置されるように調整するとともに、有資格者のみに限定して工事にあたった。
 同社では、大屋根のステンレス工事以外にも、デッキ側面の幕板パネルとその下部の円柱パネルを施工。330平方メートルの幕板パネルは、800×2000ミリ、板厚1・2ミリのスチール曲げ加工品、外径1・4×高さ4・9メートルの円柱パネル9本は、板厚2ミリのアルミ曲げ加工品だ。その他にも、改札屋根の樋・水切および軒天井パネル、デッキ階段手摺、トイレのステンレス鏡面パネルなど、アルミ・ステンレス・スチールと材質にかかわらず複数を納品した。
 同社が新駅工事を受注した背景として、3Dデータの活用が挙げられる。世界中の人が集まることを想定している新駅における大屋根の膜を支える鉄骨は、高い施工精度と品質が求められる。そのため、施工者である共同企業体は着工前に、コンピュータ上で3次元の形状情報に加え、材料・部材の仕様・性能、仕上げ状態など、建物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築するシステム「BIM」を用いて検証を続けていた。
 BIMデータだけでは具体的な製作検討は難しいが、同社では3次元CADを業界に先駆けて導入するなど、BIM対応の体制が整っていた。そのため、膜工事と該当工事のデータを鉄骨3Dに重ね、干渉や穴が空かないかなどの検証を行うなど、設計打合せで3Dデータを活用することができた。
 同社の強みは、「Never Say No(対応できませんを口にしない)」を社訓として過去に着手してきた金属加工実績だ。実勢とは、従来のように溶接技能者でなければ対応できない案件はもちろん、ファイバーレーザ溶接や摩擦攪拌接合(FSW)などの最新技術を駆使する案件、3DCADによる打合せなど、「できないを口にしない」ことで世界中から受注し、溜まったノウハウと技術力を指す。
 和をテーマとして白い折り紙がモチーフである大屋根は、国際交流拠点の玄関口と位置づけられ開発が進められてきた。同社の金属加工で日本の技術力を世界に発信する。

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