宮富士工業、全員が溶接有資格者

20/06/01

溶接をはじめ、ものづくりを事業とする町工場は、事業戦略を進める上で、競合他社との差別化に頭を抱えるところが多い。鉄骨業者における工場グレードのような客観的に技量を推し量るような制度があれば良いが、ほとんどの製造業においてそうした制度がみられないためだ。そんな中、宮城県石巻市でプラント設備の製造を手掛ける宮富士工業(後藤春雄社長)は「在籍する溶接技能者全員が日本溶接協会が認証する溶接技能者資格の有資格者であり、このほか必要に応じて日本溶接協会の溶接技術者や溶接作業指導者の資格、軽金属溶接協会の溶接技能者資格などを取得すること」で差別化を図っている。また、将来への布石として小学生を対象にした体験授業を実施するなど溶接の魅力の伝承にも力を入れる。
 同社では技能者が全員有資格者であることに加え、厚生労働省が認定する「ものづくりマイスター」が3人在籍している。電気溶接・鉄工の部門で2人、同社で代表を務める後藤社長も電気溶接部門で認定されている。また、後藤社長は2012年度に「現代の名工」にアーク溶接士として選定されたほか、高橋茂男工場長は日本溶接協会が昨年度から実施している「日本溶接協会マイスター」に認定されている。
 後藤社長は、「技能者として一人前になったら、次は、ものづくりの持つ喜びを後進に伝えて教育する段階が待っている。そのためには、それに見合うだけの知識や技術力を必要とする。従業員には、自分達が小さな町工場の職員ではなく、少数精鋭なのだと思って欲しい。だからこそ、資格という対外的な証明を与えたい」と話す。
 さらに、同社では将来の溶接士を確保するため、後藤社長をはじめ在籍する技能者が近隣の小学校6年生にものづくりの楽しさを伝える「イシノマキッズ・トライ授業」という体験授業を2016年から開催している。
 今年も2月に、市内の蛇田小学校6年生4クラス140人の生徒に対して、金属の溶接・曲げ・切断加工などの見学、ペン立て付き貯金箱の製作というカリキュラムで体験授業を実施。参加した小学生は、初めて見る機械の数々に盛り上がりをみせた。
 授業のプログラムは全て同社に在籍する技能者によって考えられており、工具を必要としないこと、雑誌の付録感覚で簡単に制作できること、数十分で組立てが完了することなどの制約の中でプログラムを考える。小学生は説明書を見ながら正確に金属を手で曲げ、目的の位置にはめ込むといった溶接工場で必要となる技術を使いながら、ものづくりを学ぶ。
 具体的には、普段見慣れない工場の機械を見学しながら、機械の使い方に沿った加工を、日頃使用している身近なノリ・ハサミなどになぞって説明を受ける。その後、ものづくり体験に使用する教材であるオリジナルのステンレス製貯金箱付きペン立てを作成。メインとなる素材はステンレス鋼(SUS304)で、底部には3Dプリンターで製作したPLA樹脂を使用する。
 参加した小学生からは「ものづくりが好きになった」「レーザや機械をたくさん見れた」「金属を切るのがすごかった」「3Dプリンターをもっとやりたい」など好意的な感想が寄せられている。 後藤社長の思惑通り、ものづくりの喜びは後進に伝わっているようで、小学生を熱中にさせる秘訣は「概要だけ伝えて自由にやらせて、教え過ぎないこと」だという。

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