全国軽金属溶接競技会優勝選手インタビュー・中山薫氏(赤星工業)【第1種】

20/05/22

 アルミニウム溶接の技能を競う45回目となる全国軽金属溶接技術競技会が昨年10月26・27日に開催され、その入賞者が発表された。同競技会は第1?3種まであり、参加選手の溶接作品は、外観審査、放射線透過試験、曲げ試験、裏波によるほか、労働安全衛生に対する作業状態など加味され順位が決まる。今回の第1種「ティグ溶接の固定管」での優勝者は赤星工業(千葉県市原市、伊藤広一社長)の中山薫氏に話しを聞いた。
全国軽金属溶接技術競技会には、鉄道や航空宇宙分野など幅広い企業から3種目合計62人、第1種には10人が参加している。同競技会の各種目は1人1回しか出場することができない事が慣例となっており、当日にベストを尽くせるように競技会直前に約1ヵ月半の練習を行い挑戦した。赤星工業は、過去に4回の優勝者を出しており、周囲からの期待も大きかったために、原動力に変えて練習に打ち込んだ。
 先輩社員からのアドバイスで1番参考になったのは、労働安全衛生に対する作業状態だ。日頃から安全に気を付けながら勤務しているものの、競技としての安全衛生は情報として知らなければ、僅差となる上位者の総合得点では不利になることも多い。安全衛生面を気にしながらの競技中の溶接姿勢なども知識があったから、すんなりと溶接に集中できた。
 日常業務では、チタンのティグ溶接で作る製品を担当することが多いため、実はアルミよりチタンの溶接の方が得意だ。しかし、チタンをティグ溶接する時には、溶融池に溶加棒を挿入するペースがアルミよりも早く、同じ距離を溶接するとチタンの方が挿入回数が多くなる。溶加棒挿入のタイミングはミスが発生しやすいため、普段チタンに慣れているからこそ、焦ることなく自分の溶接と向き合うことができた。
 入場した時には手が震えたが、競技が終わった時に、周囲選手の作品を見渡して直感的に、「自身の作品が見劣りしてはいない。大きなミスもなくベストを尽くすことができた」と感じた。結果も決して悪くないだうとは思っていたが「日本一だ」と聞いた時には、しばらくは実感が湧かなかった。今は競技前に練習の時間を与えてくれた会社や、アドバイスをくれた先輩社員に感謝している。
 当社には競技会直前になると、競技会に参加したことがある先輩社員10人以上の前でアルミ溶接を行って、アドバイスをもらう直線練習がある。競技会に参加した時に緊張しないようにという心遣いなのだが、直前練習は、まともに顔が上げられないほどのプレッシャーがあり本番以上の緊張感で臨んだ。
 この練習は競技会当日において効果てきめんで、緊張しがちな性格でも、本番にベストを尽くせたことに感謝している。今後は後輩社員にアドバイスする側になるので、自分の経験をしっかりと伝えていきたい。
 高校を卒業してすぐに当社に入社して溶接士としては14年目だ。高校が普通科だったため、溶接に関しては素人で入社したにも関わらず、超大手企業を凌いで日本一の称号を手にすることができた。溶接作業を終えた後に、溶接マスクを外してビードがきれいに引けていると、思わずニヤけてしまうことがある。これは、他の仕事では体験できなかった充実感で、生涯溶接士として働いていきたい。

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