工場探訪ルポ

■サンライズ鉄工

【自動車部品製造】
○フラッシュバット溶接を導入
○「不良品ゼロ」目指す

 サンライズ鉄工(東大阪市加納、岡林一郎社長)は1964(昭和39)年に大阪府門真市で創業。69年1月に法人化し、現在地には83年に移転した。「良質の製品を短納期に供給すること」「顧客の要望に合わせたきめ細かい対応ができること」をセールスポイントに、この不況下でも多忙を極める同社を取材した。

岡林一郎社長(左)と横山群平工場長
  
 同社の事業は大きくわけてフォークリフト部門、製缶部門、フラッシュバット部門の3部門で構成され、それぞれ大手企業を中心に幅広い得意先を持つ。フォークリフト部門ではフォークリフトに取り付ける部品やアタッチメントなどを製造し、高度化するロジスティクスに対応しているほか、製缶部門では自動車生産ラインにおける主要構造体の製缶部分などを製造。
 そしてフラッシュバット部門では、自動車に欠かせない重要部品である「クロスロッド」を月平均1万5千〜1万6千本製造している。「クロスロッド」とはハンドル操作を車輪に伝えるための部品で、同社が生産しているクロスロッドは新車用ではなく補修用部品。したがって日本にはほとんど流通しておらず、出荷先は中近東、アジア、ロシアなどが中心だ。ちなみに親会社の三恵工業は「555」(スリーファイブ)のブランドで知られるアフターパーツのトップメーカーで、全世界において圧倒的なシェアを持つ。
 そのような背景に加え、万が一折れたら大事故につながりかねない重要部品であるため、同社においても「不良品ゼロ」は言うまもない大命題となっており、それに対応するべく07年11月にはISO9001・2000年版を取得するなど、品質管理には万全の態勢を整えている。
 そのフラッシュバット部門であるが、ネーミングは文字通り、クロスロッドの生産工程でフラッシュバット溶接を適用しているところから命名したもの。▽ワイヤ、ガスなど消耗品が不要で、ランニングコストがあまりかからない▽接合強度が強く、信頼性が高い▽溶接速度が速くて高能率??といった特徴を持つフラッシュバット溶接はクロスロッド生産に最適な溶接法と言える。
 同社では親会社から支給された直径14〜27ミリのS45Cロッド部材を1ヵ所ないし2ヵ所、フラッシュバット溶接で接合して一体化し、その後、バリ取り、研磨、焼きなまし、検査(全数)の各工程を経て出荷している。

研磨工程


焼きなまし工程

 取材に応じてくれた岡林社長によると「フラッシュバット溶接を駆使してクロスロッドを製造しているのは、おそらく日本で当社だけではないか」と、その技術と高い専門性に絶対の自信を見せる。その裏付けは事業化して約40年に及ぶキャリアにあり、現在も熟練の職人がワークのセットから溶接まで1サイクル約30秒の工程をテキパキとこなす。
 溶接装置は現在、手動式1台と、88〜89年に相次いで導入した半自動式2台の計3台を保有。同社の横山群平工場長によると「14ミリクラスの口径は手動、18ミリ以上の口径は半自動という具合に使い分けている」というが、現在は89年導入の半自動2号機がフル稼働の状態だ。1号機よりパワーで勝る上、自社で改良して一部をデジタル化していることから、職人も使い勝手が良いのだという。
 とはいえ「デジタルを取り入れているとはいうものの、条件設定は人が行うなど、今でも職人の勘と経験に頼る部分は多い」(同)のが現状。
 特に加圧した後の電流カットは微妙なタイミングが要求されるとのことで、そこが全自動化できない一つの要因となっている。しかし後進への技能伝承や品質の安定化のためにはデジタル技術導入が不可欠との認識は強く、5月の連休までには導入する予定という4台目のフラッシュバット溶接装置は「より人の感覚に近づけたデジタル技術を取り入れるべくメーカーと開発中」(岡林社長)とのことだった。
 史上空前の不況に見舞われている自動車業界だが、メンテナンス用クロスロッドについては親会社から「あと3〜5年は大丈夫」と太鼓判を押されているそうで、事実、1月の生産量も1万8千本と平均値を上回るペースで好調に推移。それ以外の分野もまずまず堅調なことに加え、複合レーザ溶接機や流体挙動観察装置など、独自の技術を駆使した製品開発にも余念がない。
 「品質、性能、納期とも他社ができないことをやるのが天命」という横山工場長の好奇心、チャレンジ精神と、既存事業をしっかりと支える岡林社長の強力タッグが「不況知らず」の企業体質を作り上げているように見えた。 

お勧めの書籍