工場探訪ルポ

■東開工業 (福島県福島市)

○橋梁・水門製造〜高い溶接技術を維持
○技能伝承に向け、教育の充実図る

ステンレスは厨房・医療用機器や自動車部品など薄板の適用が盛んな一方、製缶などでは中板を適用するケースが多い。そこで今回は、溶接技術競技会全国大会で上位入賞するなど高い技術力を誇り、水管橋や水門などの中板ステンレス加工を手がける東開工業本社工場(福島市佐倉下字観音堂11ー3、平塚隆社長)を訪問。安田洋常務、製造部加藤英和次長、同小関和彦氏からステンレス溶接と溶接技術向上への取り組みを聞いた。

安田洋常務 


加藤英和次長

 東開工業は1920年の創業。公共工事や東北電力や東京電力などの電力会社を主な受注先とし、橋梁をはじめ水圧鉄管、水門、除塵機などの鋼構造物の製造を手がけている。
 同社本社工場は佐倉工業団地の一角に位置している。敷地面積4万0717平方メートルを有し、第1・第2製缶工場、機械・塗装工場の2棟が連なっている。従業員数は約120人。そのうち8人が専門工として溶接に携わる。溶接関係では、半自動アーク溶接機30台、被覆アーク溶接機30台、ティグ溶接機3台、ほかに自動溶接機3台を設備している。
 同社では橋梁を主力事業としてきたが、沿岸地域での海風による腐食防止のためにステンレスの需要が高まり、ステンレス加工にも力を注いでいる。主な素材はSUS304で、板厚は6〜9ミリが中心だ。年間使用量は約100トンほどだという。
同社で製造する製品は受注生産の割合が高いため、自動化が難しく、作業者の技能による溶接が中心だ。素材に中厚板を使用するほか、すみ肉溶接の頻度が高いことから溶接方法は主に炭酸ガス半自動溶接を使用している。またステンレスの場合、構造物の塗装を行わない場合もあるため、ビード外観を重視する場合はティグ溶接を用い、各部材毎に使い分けている。
 ステンレス鋼の溶接で最も気になるのは熱ひずみなどの熱影響対策だ。同社では「ワークを治具で固定し、電流値など最適な溶接条件による溶接を心掛けている」(加藤次長)と入熱管理をはじめ、基本を徹底することが重要であるとする。
 また、「溶接部の長さが長い場合は溶接走行台車を使用して、ビードを均一にするとともに、作業効率の向上を図っている」(小関氏)と、自動化による品質と効率の両立を目指す。
 加えて、外観という面では工場内に酸洗い場を設けており、専門作業者による入念な仕上げで、美麗な外見を確保している。

ステンレス製水門

 このように製造ラインは、全て作業者の技能により支えられている。このため作業者一人ひとりの技能が非常に重要であるが、特別な取り組みをしておらず、技術向上に対する社内教育は、作業中の指導など基本的な指導のみという。
 しかし、同社は日本溶接協会福島県の「溶接技術競技会」に積極的に参加しており、日本溶接協会の全国溶接技術競技会(全国大会)出場選手も輩出し、上位入賞と好成績を収めるなど、高い溶接技能を披露している。
 こうした競技会の前には各作業者とも練習に励んでおり、技術研鑽の場となっているようだ。また、競技会の会場設備に合わせデジタル溶接機を導入するなど、作業者へのサポートにも力を入れる。
 しかし、このように高い溶接技術を誇る同社にも課題はある。なかでも、若手作業者の確保による組織の若返りは重要な懸案事項だ。現在の溶接作業者は30歳以上が過半数で、熟練者は高い技能を持つ半面、高齢化も進んでいる。「来年以降は新規採用を行い、技術の伝承を進める」(安田常務)方針だ。さらに、熟練者による新入社員向けの教育部門の立ち上げも検討しており、社内の教育体制の充実を図る。
 最近の景況については「当社の得意先は公共工事や電力会社。しかし一昨年頃から福島県内の公共工事件数が激減した。電力関係はメンテナンスなどの設備更新で安定した需要があるが、今後の展望を見通すと市場に不透明感もある」(安田常務)と市場には慎重な対応が求められるなか、「現在はプラント関係などの民間受注の拡大にも取り組んでおり、今後の受注増加を見込んでいる」(同)と、新規開拓にも力を注いでいる。
 加えて、東北地方だけでなく関東や甲信越まで、県外から広範囲に受注を請け負っており、「昨年度の売上高は前年比横ばいを維持している」(同)という。市場には厳しい状況が残るものの、同社では積極的な営業施策を打ち出し、対応を図っている。
 今後の目標について聞くと、「機械設備は更新の時期に差し掛かりつつあり、溶接用ロボットなども視野に入れた設備の更新を検討していく必要がある」(同)と新たな局面を向かえており、今後に向けた対応を検討していく構えだ。

お勧めの書籍