工場探訪ルポ

■大和 (埼玉県さいたま市)

○自動車マフラー製造〜金型から箱詰めまで
○細部にこだわりマフラー生産
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 ステンレス鋼製自動車マフラーには、マグ・ミグ溶接をはじめ、ティグ溶接、プラズマ溶接など様々な溶接方法が使用されている。最近では溶接品質の更なる向上のためレーザ溶接の導入も進み、部位ごとに溶接方法のより細やかな使い分けが求められている。
 そこで今回は、多品種少量生産で自動車マフラーの製造を手掛ける大和(さいたま市岩槻区並木2丁目10番12号、塚目博之社長)を訪問、生産上の創意工夫や技術面でのノウハウ、今後の営業方針などを聞いた。    

塚目博之社長

 さいたま市東部に位置し、11万人以上の人口を有する岩槻区。東武野田線・岩槻駅のプラットホームには、同区の伝統工芸である日本人形がガラスケースに飾られている。その岩槻駅から車で5分ほど進むと、田畑に面した民家の中にひときわ大きな建物が見えてくる。
 大和の設立は平成11年6月1日。事業は自動車・オートバイ部品の企画・製造・販売のほか、自家用発電機等の消音器の製造を手掛けており、今年で丸9年を迎えた。
 会社は3階建の社屋のうち、1、2階部分が工場。1階の生産ラインではエンジン側にあるエキゾーストマニホールド(=EX)からテール・パイプまでの自動車用排気パイプの部品約40点を部位ごとに製作し、2階ではそれらの部品の溶接、仕上げを行っている。
 マフラーの種類は約3800点。その数字は「受注生産で制作しているマフラーはほとんどの国産車に対応できる」(塚目社長)ほど。本数も年間約8800本生産しており、内訳はステンレス鋼製約6千本、スチール製約2千本、チタン製約800本、と、7割弱をステンレス鋼製が占めている。
 完成品は関連会社の「ラインハルト」「イーポッド」を通じて、トヨタやマツダの販売店や、自動車用品の専門店であるオートバックスセブンなどに向け納入している。
 ちなみにステンレス鋼の年間使用量は、「SUS430」(約700枚)を中心に、「SUS430パンチング板」(約300枚)「SUS304」(約100枚)「SUS304パンチング板」(約20枚)と続く。
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 肝心の溶接個所は、主に触媒(メインコンバータ)とエンドマフラーの部分。作業工程を見ると、胴体部分を、鋼板からタレットパンチ「MAPー500」(日清紡製)で部品を刳り抜き、ウレタンロール「Nー6011型」(池田喜製)で筒状に丸め、水平自動溶接機「ELー800型」「LEー600型」(ともにサンワテック製)で直線のティグ溶接をする。
 その後、プレス加工機「STP?100」(ダテプレス製)で楕円形に変形、ダブルフランジャー「S43ー3」(ODM製)で両端をフック状に変形?強力下巻型アドリアンシーマ「S33ー6CーS」(半田工機製)に入れ底、フタを圧接(排気筒が2本の場合)と進む。
 円周溶接は工場の2階で行われ、パイプと触媒、パイプとマフラーを封止する。同社ではEX側を「KF200」(松下溶接システム製、180A)などのミグ溶接機とソリッドワイヤ「YM?50MT」(ワイヤ径0・9ミリ、松下溶接システム製)、FCW「GFW308L」(ワイヤ径0・9ミリ、タセト製)の組み合わせ、テール・パイプ側をTIG溶接機「YC?300BP2」(松下溶接システム製、110A)とティグ溶接材料「TG308L」(タセト製)の組み合わせで行っている。

テールパイプ側の溶接


EX側の溶接

 それぞれの部位の作業者の方に溶接時のコツを聞くと、共通して「ワークを載せた治具を一定の速さで回すこと」と答えた。その理由は、「ムラがなく焼けが綺麗なビードを残すため。治具を回す速さは人それぞれだが、いかに自分の手に感覚を染みこませるかが重要」と語る。
 そこでマフラー製作に当たっての創意工夫を社長に聞くと、「例えば新しいエンジン特性に合った排気効率や排ガス規制対応の製品など、現在のマーケットにおけるユーザーの仕様・デザインニーズに対応するため、日々研究開発している」(塚目社長)と語る。
 ところがこだわりは触媒とエンドマフラーの溶接以前の工程からある。パイプは曲げ工程をパイプベンダー「TBーDRー60CNC」(太洋社製)の金型を、細穴放電加工機、高性能ワイヤー放電加工機(以上、ソディック製)、立形マシニングセンター(OKUMA製)を使用し、06年より自社制作しているのだ。
 その金型の種類は、38φから101・6φまで8種類。「パイプベンダーの金型は、パイプ径により付け代える必要がある。以前は外部に製作を発注していたが、自社制作に切り替えた」(社長)。その理由を聞くと、「コストダウンや納期短縮はもちろんのこと、社員教育の一環でもある。人には向き不向きがあるので、入社すぐの社員が溶接に興味を持つとは限らない。工場内には、曲げ、溶接、塗装、研磨など、色々な作業工程があるので、間口を広く構え、その中から自分の好きな仕事を選べば良い。たとえ社員が仕事で失敗した時でも、一緒になって改善策を考え、喜ぶことで少しずつ仕事を覚えていく」(社長)と語る。
 職場環境の面でも、「在庫管理と職場の整理整頓を今年度の1番のテーマとして掲げ、週1開催の社内ミーティングで製品の受注状況と材料の過不足を確認などに取り組んでいる」(社長)という。
 しかし社長の関心はマフラーにとどまらない。「正直なところ、マフラーの生産だけでどこまで商売していけるのか、疑問を抱いている。作るものを限定するのではなく、ものづくり全てを対象に、事業の幅を拡げていきたい」と前向きな姿勢を示す。「まだまだ、楽しみはこれからです」。

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