工場探訪ルポ

■富田製作所(千葉県松戸市)

○厚板精密板金のプロ自称
○マンツーマン指導で技能伝承

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 富田製作所(本社・千葉県松戸市、富田大治郎社長)は、コマツグループ(コマツユーティリティ、小松製作所)の輸送用機器・建設機械部品が売上高の約53%を占める一方、プレス板巻きによる長尺大径厚肉鋼管を得意とし、「厚板精密板金のプロ」を自称する。
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 同社の平成20年4月期(第52期)の売上高は前期比19・1%増の49億7870万円。
 売上構成をみると、コマツユーティリティ向けの輸送用機器部品(主にフォークリフト部品[フィンガーボード])が29・2%と最も多い。
 「8トンクラスまでは、当社の手がけるフィンガーボードとコマツユーティリティのフォークリフトの生産台数が一致する」(富田社長)だけあって、古河工場(茨城県古河市、敷地2万2630平方メートル、建屋1万2720平方メートル)では塗装を終えた大量のフィンガーボードが出荷を待っていた。
 従業員、売上げとも同社の4分の3を占める古河工場にはハンドリングを含め約40台のロボットが稼働している。溶接ロボットについては、6年前まで工場があった松戸市の本社に「昭和54年、千葉県内で初めて導入」(富田社長)して以降、省力化の進展とともに台数が増え、現在、溶接・溶断関係で約30台(安川電機)が稼働している。
 「今年5月には、フィンガーボードを月産1200台から2000台に増産するため、溶接ロボットを新規に2台増設している」(富永正駿専務・工場長)


富田社長(左)富永専務

 溶接ロボットは10台以上製造する部品に適用するが、実際のところ、少量多品種がほとんどであるため、小ロットは手溶接で施工する。
 溶接技能者については高齢化が進むなか「社長の強い思い入れがある技能伝承を実践するため、ベテランが若手をマンツーマンで指導し、ここ数年、着実に成果をあげている。また当社ではJISの基本級、専門級取得と連動させながら独自の技量向上試験を実施し、初級、中級、上級と技能者をランク付けしている。来年はぜひ、茨城県で開催される技能五輪全国大会に若手をチャレンジさせたいと考えている」(富永専務)
 輸送用機器部品に次いで多い建設機械部品(売上構成比率23・7%)について、古河工場では主にダンプトラックのベッセル(荷台)の床の部分を製造している。


トラックのベッセル(荷台)の床を溶接

 同社が一昨年12月、日鐵商事、新日本製鐵、千曲鋼材、住友商事とともに設立した「NS富田」(本社・茨城県常陸大宮市工業団地。株主構成=富田38・5%、日鐵商事25・5%、新日鐵14%、千曲12%、住商10%)は今年10月から、大型ダンプトラック用のベッセルについて、切板、溶接、製缶、塗装まで一貫生産する運びとなっている。
 建設機械部品は、つくば工場(茨城県下妻市、敷地3万3076平方メートル、建屋1万368平方メートル。今年、隣接の8910平方メートルを追加取得)でもホイールローダのバケットなどを手がける。
 古河工場は昨年5月に、エコステージ協会のエコステージ認証(認証レベル:エコステージ1[輸送機器部品製造業])を取得した。
 エコステージは、五つのステージを備えた環境マネジメントシステムで、ISO14001に準拠しつつ、企業が各ステージの要求事項に段階的かつ継続的にレベルアップしていく環境経営の仕組み。
 40年前の建設当時から古河工場に携わってきた富永専務は「これまでいろいろな仕事をこなしてきたことでたまったあかを落とす好機となった」と振り返る。
 輸送用機器、建設機械以外にも高炉、鉄塔・ポール、造船、建設資材など広範な業種と取り引きがある。最近では羽田空港D滑走路建設工事の鋼管杭をはじめ、高炉関連の仕事が増えている。
 大径肉厚鋼管については「斜陽ゆえに大量に製造していたところがなくなり、隙間産業に流れてきた格好。それほど大きくはならないものの、ゼロにはならない。最近ではプロジェクトのほか、高炉のOEMを手がけており、丸管はUO成形でできないものを受注している。実はUOにかからない丸管の需要は結構あって、西には数社あるものの、東で製造できるのは当社だけ。信用を得るまで時間を要したが、最近では『パイプだったら富田』とリピーターも増えてきた」(富田英雄専務・製造本部長)
 第53期は依然旺盛な輸送用機器、建設機械需要に加え、プロジェクトものでは東京スカイツリー向けの鋼管製造も始まることから「材料高騰も重なって増収が見込まれるが減益にならないよう努めたい。ただ54期以降については、パイが小さくなるのではと懸念しており、昨年7月から製造本部を新設した。少子高齢化、公共投資の減少が続くなか、出てくる仕事はいままでのようにはいかなくなる。ならばある仕事をどうこなしていくか。世代交代を含め製造本部に一本化した中でベストを尽くしていく」(富田社長)

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