工場探訪ルポ

■マルタツ(茨城県稲敷市)

○地力ある100億円企業に
○溶接システム「すべて神鋼」

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 建設機械部品製造のマルタツ(本社・茨城県稲敷市、佐藤務社長)は平成16年度の42億円から53億円、62億円、71億円と着実に売上げを伸ばしている。昨年には、四つ目の工場となる竜ヶ崎新工場(敷地2万2247平方メートル、建屋3600平方メートル)が稼働を開始した。20年度業務方針には、同社の勢いそのままに「変化に即応、地力ある100億円企業に」の文字が躍る。


佐藤社長(中)鈴木専務(右)青野部長

 「こんな状態がいつまでも続くはずはない。あと1年もすれば減少に転じるとここ6、7年言い続けている」(佐藤社長)
 「青息吐息」(鈴木蔚専務)の10年前、80人だった従業員は現在、約300人にまで拡大。月当たりの鋼材使用量は2500トン、ワイヤ使用量は40トンに上る。
 建設機械部品の主要取引先は、日立建機、日立建機カミーノ、TCM、住友建機製造、日立住友重機械建機クレーン、古河ロックドリル、古河産機システムズ、竹内製作所。
 同社の製造部品が多く用いられる油圧ショベルのメーンフレームは、センター(上)、サイド(左右)、テール。その下のトラックフレームは、センター(下)、サイド(左右)の各フレームで構成される。
 新利根工場は、テールフレームやバケットが中心。この1年で生産能力を3割増強した出島工場(かすみがうら市。敷地1万1904平方メートル、建屋3643平方メートル)はセンターフレーム(下)、ミニショベルの一体型メーンフレームなど。竜ヶ崎工場(竜ヶ崎市。敷地2209平方メートル、建屋660平方メートル)はサイドフレームを主に手がける。


テールフレーム本体溶接ロボットシステム

 「建機は山谷が大きい」(佐藤社長)ことを踏まえ、建機以外の部品開拓に力を注いだ結果、出島工場では建設分野の耐震ブレース装置(14年4月生産開始)、造船分野のエンジン冷却ダクト(15年1月生産開始)も製造している。
 いまや建機部品製造に不可欠なロボットは、新利根13台、出島10台、外注3台の合計26台。これらはすべて、神戸製鋼所溶接カンパニーの建設機械部品溶接ロボットシステムを導入している。
 長年、ロボットに携わる製造技術部の青野一男部長は「神戸製鋼のロボットからさまざまなことを覚えているので、他社のものでは立ち上がらない。またこれまでの経験に基づき部品の互換性などすべて統一している」。鈴木専務は「現状、厚板に関しては神戸がトップクラス」と語る。
 溶接ロボットについては、今年だけで新規3システム、更新2システムと投資にも積極的だ。稼働したばかりの竜ヶ崎新工場は当初4システム、年度内に3システムを追加導入する計画で、センターフレーム(上)組み立て主体の工場に位置付ける。
 ここ数年、10億円ずつコンスタントに売上げを伸ばしているが、繁忙ゆえの課題もある。
 「生産量の拡大にともない、2、3年前から土曜操業、シフト制導入、増員にともない効率は悪くなった。利益に関して、もっと伸びていいはずなのに、どこか無理をしているところがあるのかもしれない」(佐藤社長)
 「建屋、敷地に応じた能力のうち7割程度を発揮していたものが100パーセントになった。100を超えるとロスばかり多くなり、利益率はよくない。また自動化が進んでいるとはいえ、ワイヤ使用量月40トンのうち、ロボット使用量は25トンで、人によるものがかなりある。例えば土曜日に2交代で作業すれば、一工程当たりの単価は当然高くなる」(鈴木専務)
 業務方針に示す改革項目の一つに、人材の教育・育成がある。
 同社では、定年を過ぎた溶接技能者が約20人いる一方、30?40歳は片手で数える程度。また協力会社の外注も90人と多いため、技能伝承など将来を踏まえると社員として育てた方がいいのではと考え、最近では毎年10人以上、若い人を積極的に採用し、25歳前後のグループリーダーが8人育った。若手にはより高級な溶接ができるように、取引先が取材する技能競技会にも毎年、選手を送り出している。
 300人規模になったことで生産技術の管理力も大きな課題となった。
 「工程管理、溶接技術管理を通じ、自動化をいかに高めていくか。安いだけではだめで、若い人にいかに理屈を覚えさせるかがカギになる。建機に固執することなく、新規分野を開拓したとき、オペレーションだけでなく生産技術をプログラムできる人員の育成が今後、他社との差になってくるだろう」(佐藤社長)
 最後に今後の抱負を聞いた。
 「設備は儲かれば金で買える。やはり人だな。またいまの時代はスピードだな、と常々言っている」(佐藤社長)
 「増産対応に追われ、ものをつくることに傾きかけたところがある。管理、工程、技術など、いろんな意味で質の向上を図りたい」(鈴木専務)
 「溶接ロボットについては、クランプの自動化を今後の課題に掲げ努力したい」(青野部長)
 同社の2008年度業務方針には、「変化に即応、地力ある100億円企業に」の下にこう書かれている。
 基本方針「人材の教育・育成でECとCSを達成」
 目標「経常利益5パーセントの確保」

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