工場探訪ルポ

■末吉工業(埼玉県伊奈町)

【ユーザールポ】
シーム溶接

○一個流し、一貫生産の製造ライン構築
○電極研摩など基本に最新の注意

    ◇

 抵抗溶接技術が用いられる産業の代表に自動車産業がある。なかでも、スポット溶接の適用がメーンとなるが、気密性が求められる燃料タンクなどの製品にはシーム溶接が用いられる。
 今回は自動車向け燃料タンク、建設機械向け作動用タンクを製造する末吉工業の伊奈工場(埼玉県伊奈町)を訪問し、國澤俊男社長と岡田道夫設備管理部長から同社の製造ライン構築への取り組みについて聞いた。

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國澤俊男社長

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岡田道夫設備管理部長

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 同社は自動車用部品メーカーフコクグループの子会社として1952年に創業。日産ディーゼル工業、いすゞ自動車、日立建機グループなど自動車・建機メーカー各社を主要な取引先に、自動車および建設機械用燃料タンク、作動用タンク、各種板金部品の製造を主に手がけている。
 埼玉県内に伊奈工場、上尾工場の2工場を有しており、従業員数は約290人。溶接作業にはそのうち150人と約半数の人員が携わっている。
 溶接機をはじめとした設備について聞くと、両工場合計でシーム溶接機14台、スポット溶接機54台を有し、抵抗溶接機は電元社製作所製を導入している。
 溶接用ロボットは、スポット溶接ロボット9台、アーク溶接ロボット35台を保有。ロボットは安川電機製が中心だ。このほか、炭酸ガス半自動溶接機130台を筆頭にティグ溶接機、摩擦攪拌溶接システムなど、幅広く各種溶接装置を備えている。
 今回訪問した伊奈工場は敷地面積1万9549平方メートル、燃料用、作動用タンクとプロペラシャフトなどを製造している。自動車用タンクは主にトラックなどに搭載される大型燃料タンクを中心とし、建設機械向けは燃料タンクに加えてショベルカーなどの油圧タンクである。生産能力は自動車向けが月産6000台、建設機械向けが月産5000台ほど。
 同工場では、自動車向けと建設機械向けの2種類10ラインを設けており、その特徴を「ワークの1個流しと一貫製造である」と國澤社長は言う。
 同社では15年前から仕掛りゼロを目指した製造ライン構築に力を注いできた。「ロット製造ではなく一個流しで製造することで、生産リードタイムの短縮を実現させることができた。また、ワークのセットなどは作業者の手によるが、積極的にロボット溶接システムを導入し、省人化・自動化したラインを完成させた」と岡田部長はその成果を語る。
 製造工程を見ると鋼材に曲げ加工を施し筒型とし、縦シーム溶接で両端部を接合。スポット溶接ロボットによるバッフルスポット溶接工程、立置き横シーム溶接機によるエンドプレートシーム溶接工程を施したのち、気密検査、塗装を行い製品とする。建設機向けではアーク溶接ロボットによるロボット溶接が施される。

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立置き横シーム溶接機での作業

 溶接作業での注意点を聞くと、岡田部長は「溶接で一番大切なことは溶接の状態を監視することだ」と答える。作業で用いる抵抗溶接機はアーク溶接と異なり作業者の技能に品質が左右され難いことから、溶接時の装置の状態や電極研摩状態、駆動部の状態などに細心の注意を払うという。
 さらに、同社では亜鉛メッキ鋼板などの溶接性の悪い素材を使用することから、素材に合わせたインバータ電源のシーム溶接機を導入し、各素材に対応している。
 同社の取り組みは「当たり前のことを当たり前のように行うこと」(國澤社長)という言葉に集約される。同社製品には高度の気密性と耐久性が求められることから、溶接不良は製品の手直し加工に直結する。こうした溶接不良を未然に防ぎ、溶接品質を高めることは生産性能向上につながる。そのため、「スパッタを出さず、ひずみを抑える。粉塵をなくし、清潔な工場と素材を心がける。部品の寸法精度を高め、製品を良いものにする」(國澤社長)と基本を忠実に守ることが大切であると訴える。
 このほか、溶接作業はスポット溶接、シーム溶接などの抵抗溶接が中心となるが、同工場では抵抗溶接だけでなく、建設機械用タンクには炭酸ガス半自動溶接を使用し、アルミニウム合金などの素材にはティグ、ミグ溶接も用いる。上尾工場で製造する大型トラックの懸架装置には摩擦圧接を使用するなど、「使用する素材に合わせて、ほぼ全ての溶接加工を行っている」(國澤社長)と対応力の幅広さを示す。
 さらに、最新溶接方法にも研究を怠らない。同社生産技術部門を中心に研究を進めており、材料変化に伴う技術対応に力を注ぎ、最近は新技術として厚板用向けに低入熱の溶接方法であるCMT(コールドメタルトランスファー)に注目する。手移入熱による低スパッタと低歪みが魅力だ。今後、新設する建設機械向けタンクおよびアルミニウム製タンクの製造ラインなどに導入する方針だ。
 清浄な環境作りによる生産性の向上という基本を抑えながらも、視野を広く見据え最先端技術にも旺盛な意欲を見せる同社展開には今後も注目される。

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出典:溶接ニュース
2008年6月24日第2768号

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