工場探訪ルポ

■田中ステンレス工業(東京都)

【ユーザールポ】

日本ウエルディングYAGレーザ溶接・切断機「ウエルペンレーザー」


○歪み少なく、後処理軽減
○不具合ゼロ徹底
○航空機業界で名をはせる

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 プラズマ溶接・切断機、YAGレーザ溶接・切断機の製造、販売を手がける日本ウエルディング(東京都大田区)の「ウエルペン・レーザー」は、歪みや焼けの少ない溶接が容易に行えるうえ、作業性とともに後工程の簡略化を実現するハンドワーク対応型YAGレーザ溶接・切断機だ。今回訪ねたユーザーは、「軽量」という厳しいテーマが課せられる航空機部品や半導体洗浄機を手がける田中ステンレス工業(東京都青梅市新町8―8―15)。「いい製品ができて客が喜んでくれればそれでいい」と語る田中豊社長は、ものづくり好きを自認する「技術屋」だ。

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田中豊社長

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3年に導入したウエルペンレーザー

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 「うちには営業マンがいない」
 従業員が20人を超える規模になった現在も、この方針は変わらない。
 「一人でブリキ屋を始めたころ、若い金属と呼ばれたステンレスの価格は鉄の10倍、加工賃はその倍くらいもらえた。そこに目をつけ、ステンレスの仕事をこつこつと増やしていった。当時から営業はしたことがない。あそこに行けばできると客の方から訪ねてくる。運転免許がないといっても寸法取りにやってくる時代だったから、それだけ技術屋が強かった。いまでも営業マンはいないが仕事はある。ただいいものをつくる技術屋の地位は全般的に低くなった」
 1964(昭和39)年、現社名となり、74年に現在の所在地に工場を構えた。創業当時に手がけたのは、ステンレスの冷凍ショーケース。その後、超音波の洗浄槽、建築関係が増えた。
 「もともと建築の仕事はなかったが、流し台にステンレスが用いられるようになって需要が拡大し、ほかにやっているところもないということで引き受けた。一時期は総売上げの3割弱を占めたこともあるが、商売としては当時からあまり芳しくなかった」
 80年ごろから、現在主力の半導体洗浄機やギャレー(旅客機用厨房設備)を受注するようになる。
 「半導体は非常に浮き沈みの激しい業界だが、半導体洗浄機に関しては同業者でも製造しているところが少ない」
 ギャレーは、機内の限られたスペースのなかで、効率よく使いこなすデザイン、機能、耐久性に加え、航空機部品に必須の軽量化が要求される。
 半導体関係は板厚1・5ミリや2ミリ、ギャレーには板厚0・8ミリのステンレスを使用する。
 2003年に導入した「ウエルペンレーザー」は、レーザ発振器を内蔵した一体型で省スペースを実現。先端のカーボンチップをワークに接触させ、軽くペンで描く感覚で溶接ができ、作業性に優れている。
 従来一般的だったティグ溶接は常に歪みが付いてまわるものであり、精密板金加工においては余計な手間になっていた。
 一方、YAGレーザはティグに比べ「非常に狭い範囲に熱が集中し、溶接速度も速い」。また母材に対する入熱が少なくなり、とくに薄板溶接で問題になる「熱歪み、溶接焼け」が極めて少ない溶接が可能になることから、「後処理が楽になった」と導入のメリットを指摘する。
田中社長は、従業員には「不具合をつくるな」と言い続ける一方で、ISO全盛の現代に苦言を呈する。
 「ものづくりの感覚を持たない人が対価を得て『不具合をつくったらどうする』などと指導するはいかがなものか。『ISOを持てば仕事を出しますよ』という業者もいるが、ISOがなくてもきちっとした仕事はできる。納入先の規格に合えばそれでいい。ただし不具合を出したら何にもならないので、レベルを高め、不具合ゼロの会社にしようと言い続けている」
 量産品はなく、単品で多種目を扱うため自動化が難しいなかで、同社では順次職場をローテーションすることで個々のレベルアップを図る。「溶接もほとんどの従業員ができる」
 主力の航空機に関しては、ボーイングが機体と主翼を含む主要構造の約50%を複合材料で製造する新型機787を発表しているように、機体軽量化の動きはますます高まっていることを受け、最近、厨房カウンターの大きな板は、より軽いアルミニウムが採用され始めている。とはいえ、ギャレーの一番目立つカウンター製造に関しては「ミスター田中」は世界で一番有名だったというエピソードからも、不具合をつくらない、同社の確かな仕事ぶりがうかがえる。

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航空機部品の加工に高評価

 「生産台数が少ないから、当社のような零細企業が参入できた。初めて注文を受けたとき、いいものができたから、ずっと続いているのだと思う」と田中社長は謙遜するものの、ボーイング、エアバスなど内外を飛び回る多くの航空機の厨房に同社の手がけた板金製品が使用されている。
 航空機需要は湾岸戦争を機に一度大きく減少し、バブル崩壊とともにさらに減少した。
 「10数年、悪い環境が続いてきたが、ここにきて非常に仕事が増えてきた。ボーイングは787を約700機受注しているが、まだ初号機が飛んでいない状態。向こう15年は仕事が見込める」

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レーザ加工機(トルンプ)も63年に導入

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重要なポジションを占めるCADルーム


出典:溶接ニュース
2008年6月17日第2767号

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