工場探訪ルポ

■デンケン(愛知県)

【ユーザールポ】

アマダ 3軸リニアドライブレーザ加工機「LC―F1NT」
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今年4月末に導入(本社工場)

○加工時間、2・5倍改善
○溶接部門強化 差別化図る

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 金属加工機械の総合メーカー、アマダ(神奈川県伊勢原市)が昨秋から国内市場に投入した3軸リニアドライブレーザ加工機「LC―3015F1NT」は、富士宮事業所のフロントローディング開発第1号製品。高速・高精度、シャープなエッジ加工などの新機能が販売開始以来、高評価を得ている。同機のユーザー、デンケン(愛知県北名古屋市徳重東出80番地)の豊田充社長は今年4月末の導入以降、「実稼働ベースで従来なら約200時間を要したものが2・5倍の速度で加工できる」と生産合理化のメリットを強調する。

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豊田充社長

 デンケンはエレベータ、エスカレータ意匠部品、搬送機部品などの精密および一般板金加工、機械加工、組み立て、表面処理まで一貫製造・梱包を手がける。
「創業は1917(大正6)年。もともと表面処理の会社としてスタートし、78(昭和53)年に板金工場を設立した。当時は大手メーカーのエスカレータ意匠部品を一括して製造する専門工場だった」99(平成11)年、板金部門を豊田電研から分社し、デンケンを設立した。豊田社長は当時をこう振り返る。
 「板金部門はずっとエスカレータの意匠部品にこだわってきた。しかしエスカレータだけでは先行きが厳しい。そこでエレベータの構造部品などにチャレンジを重ねると同時に、新分野の製品加工についてまわる機械加工、溶接を手がけるようになった。周囲からは変わることに反発もあったが、これまでずっと打破してきた」
 その結果、売上構成比はエスカレータ関連部品40%強、エレベータ関連部品30%弱、自動倉庫関連部品12―13%と営業品目が拡大。「従業員も設立時からほぼ倍増し90人を超える規模になった」。現在、ステンレスで月12―15トン、鋼板は月30トン(溶断除く)を加工する。
 アマダの最新レーザ加工機は今年4月末に導入した。
 「従来使用していたプラズマ切断機は加工領域に制約があり、今回、『F1』に切り替えた。しかもプラズマにはなかった材料供給装置をつけ、24時間稼動が可能になった」
 「F1」の検討段階では、「従来機から改善が進み加工速度などの優位性はもちろん、どうせなら話題性のあるものを入れることで新たなビジネスユニットを構築したい思いから購入に踏み切った」
 取材した6月上旬は、4月末の「F1」引き渡しから1ヵ月強が経過するなか、すでに加工速度が2・5倍改善していた。
 日本の板金業界では総じて、大量生産ではなく、生産ロットが減少傾向にあるなか、「一枚の板からさまざまな形を加工するには、レーザに置き換わらざるを得ない。量産から1個、2個流しといった少量ロットになればなるほど、レーザが不可欠になる」
 レーザの優位性を認める一方で、豊田社長は「レーザだけで儲けるのは無理」とも指摘する。
 「レーザで切って、プレスブレーキで曲げて、マシニングセンタで加工する。溶接の部門を強化しているのは、精密板金を施して納入するため。できるだけ社内に滞留する時間を確保することで、付加価値を生み出せる。したがって当社では完成品ベースで一気につくり上げるため、溶接技能者の育成にも力を入れている」
 「分社したころ、溶接技能者は数人だった」が、いまでは関連会社を含めると20人を超える溶接技能者を擁する。
 「当社くらいの規模の会社は全国に五万とある。そのなかでいかに特色を出すかが需要になる。当社には0・5―10数ミリまで加工できる特徴がある。またステンレスの意匠品から構造部品まで手がけるうえで、溶接、機械加工、塗装もできる。極めつきは溶接で、技能者20人は少なくないし大きな特徴といえる」

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関連会社を含めると20人を超す溶接技能者を擁する(西春工場)

 近年は、重要溶接管理を徹底する顧客に応じて、溶接機の更新の際はフルデジタル溶接機を積極的に導入している。「商社経由で溶接機メーカーには社員教育を依頼するほか、社内でも工場内に溶接練習場を設けて経験を積ませ、差別化を図っている」
 豊田社長の方針を反映し、社内には工場板金(機械板金作業1級1人、同2級4人、曲げ板金作業2級3人)、鉄工(構造物鉄工作業1級2人、同2級3人)、仕上げ(治工具仕上げ作業1級2人、同2級1人)、塗装(金属塗装作業2級1人)の技能士(うち複合技能士4人)に加え、JIS半自動溶接資格者(4種目15人)、JISアルミニウム溶接資格者(2種目2人)など技能資格保有者が多数在籍している。
 08年4月期決算は増収増益を確保した。豊田社長は「レーザタレパン複合加工機などのハードと技能者の数がマッチングしてきた効果」と分析しながら、依然溶接技能者は不足しているという。
 「当社の手がける製品は溶接がからむものが多いため、溶接技能者はここ数年、積極的に採用しているが、それでも追いつかないほど、工場内には常に仕事が流れている」
 かつて、取引先の担当者が上司から「デンケンはどういう会社だ」と問われたとき、その担当者は説明できなかったという。「つまり一口でこうですと言えない会社。今後も金太郎飴ではなく、切るたびに違ったものが見えてくる会社が理想だ。小粒だけれど安定的なビジネスユニットを多く持つためには、どうしても溶接をはじめとする間接的な作業が増加する。たたき合いのサドンデスに陥らないよう、間接的な部分を重視していく」

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2台目を追加導入したプレスブレーキ(本社工場)

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R曲げ加工に抜群の強みを発揮(本社工場)


出典:溶接ニュース
2008年6月17日第2767号


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