工場探訪ルポ

■佐伯重工業(大分県)

【現場ルポ】

佐伯重工業(大分県)

建造量拡大目指す

100隻目の建造船、「シップオブザイヤーグランプリ」受賞     

           
 尾道造船グループの佐伯重工業(大分県佐伯市鶴谷町2ー5ー37、岩本光生社長、資本金9000万円)は、3万〜4万tクラスのバルクキャリアーを中心に年間6隻を建造。現在、この自前船建造に加え、尾道造船の1部ブロックも手掛けているが、来年夏に同ブロック工場(尾道造船)の完成により自前船を6隻から8隻に増やすため、設備導入面でも積極的に取組む考え。
 また、昨年、ちょうど100隻目に建造した貨客船ROーRO船(約1万t)が、『シップオブザイヤー06』に選ばれ、同社造船技術の優秀さを証明するものとなった。
 天然の良港に恵まれた豊後水道の佐伯湾に位置する同社は、1988年に旧臼杵鉄工所佐伯造船所の技術と施設を受け継ぎ、バルクキャリアー(写真下)を中心に、タンカー、貨客船ROーRO船、フェリーボートの建造実績を有する。
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 現在、8万5000平方mの敷地には、クレーン5基(130t、120t、60×2.55t)が並び、自前船建造エリアと尾道造船向けブロックのエリアを有し、鋼材使用量で前者1500t(月間)、後者1200tそれぞれで、ワーク量としては、内製70%、30%はアウトソーシングしている。2007年の売上は約80億円。従業員数550人(本工170人)というのが、同社のガイドラインである。
 建造工程は、鋼材の搬入―ショット工場―切断加工―小組(小組立)―パネル溶接―大・中組(大・中組立)―船台搭載というのが大まかな工程で、同社では小組で、鋼材重量が10t、大・中組で90t程度になるという。
 この中で溶接は、約150人(本工40人)のスタッフで小組25人、大・中組90人が対応し、溶接材料使用量は約40t(月間)で、FCW(フラックス入りワイヤ)80%、被覆アーク10%強、残りがサブマージ用がその内訳。
同社は、来年8隻(年間)の建造態勢を敷く観点から、従来の一体建造に代わる”タンデム方式”の合理的建造を検討するとともに、切断のスピード化やパネルラインの2シフト化等による効率アウプ指向し、最新のNC切断機をこの9月に1台、来年には、さらにNC切断機1台と片鋼切断機1台の合計3台の導入を決めている。    
 また、溶接では、3電極FCB(片面溶接)と、10電極ラインウェルダーを導入し、溶接の自動化も図る考え。
 また、同社の悩みの一つが技能者不足で、約5年前から60歳定年を再雇用により65歳に延長するとともに、ここ4〜5年コンスタントに10人前後を採用しているが、とくに40歳台の技能者が少なく、技能伝承は頭の痛い問題であるという。
 幸い、新入社員教育については2年前にスタートした、“大分地域造船技術センター”(07年1月17日開設)を活用することで、新入社員研修の大きな力となっている。ちなみに同センターは、07年からの10年間に、造船技能者の半数近くが現場の第1線を退くと予測され、これにより熟練技能者の継承が危惧される即ち07年問題である。
 そこで、国土交通省や造船関連団体の支援により、これらの解消に向け同センターを立上げている。既に、国内5ヵ所(東日本、因島、今治、大分、長崎)で開設され、若手造船技能者育成に力を入れている。大分では、4〜6月の3ヵ月間を研修期間とし、溶接や玉掛け、クレーン操作といった、造船に必要な七つの技能資格取得にも備え、それぞれの資格取得に向けての選択も出来るカリキュラムを組んでいることと、同じ新入社員が集まるため、それぞれがライバル意識を持ち、切磋琢磨して励む場として有用であると思っていると、同社古本清輝常務は語る。
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 同社建造の貨客船ROーRO船が、「シップオブザイヤー06」(日本船舶海洋工学会主催)に輝いた。
 これは、優秀な船舶に贈られるもので、シップオブザイヤーのグランプリを受賞。同船は、現在琉球海運の「わかなつ」(写真)の船名で、沖縄〜本州を就航。グランプリ受賞の大きな要因としては、「わかなつ」が、モーダルシフト船として、トレーラー化を追求し大型化するとともに、尾道造船が開発したシャーロック(オートラッシング装置)により、荷役コストの削減や労力の省力化実現に一石を投じたことも大きい。
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 古本常務は「4年後の11年まで既に受注量は確保し、12年も1部受注済みで、現在は繁忙を極めている。将来的には不安もあるが、当面は、作業の効率化、合理化を目指し、年間8隻態勢の確立に全力投球する覚悟だ」とコメントした。

出典:溶接ニュース
2007年9月18日第2731号

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