工場探訪ルポ

■新潟造船/本社・新潟工場

【現場ルポ】
新潟造船/本社新潟工場

中・小型船建造に強み

溶接材料月間10t/地区トップの使用量

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 日本海側で唯一の造船所・新潟造船(本社・新潟市中央区入船町4ー3776、田中哲雄社長)の主力工場である新潟工場を訪問した。もともと新潟鐵工所の造船部門として1905(明治38)年に創業した同社は、2003年に三井造船グループの傘下に入り、新たに新潟造船としてスタートを切った。新会社としては今年5年目を迎えたが、創業から100年を超える歴史の中で、同社は多種多様な漁船や貨客船、作業船、実習船などを建造してきた経験と実績を持ち、主に中・小型船を得意とする。
 今回訪問した新潟工場のほか、神奈川県三浦市にも三崎工場があるが、新造船建造は主に新潟工場が担当し、年間3万総tの生産能力を有する。同社・本多宏行業務部長(写真左)によると「当社はもともと小型船を中心に手掛けてきたため、新潟工場のドックや船台、付帯設備などはそれに応じた施設となっており、現状では最大で1万2000総tクラスまでの船型が対象だ」という。また全従業員200人強のうち約160人が新潟工場に勤務し、協力会社社員を含めると常時350〜360人が作業に従事しているそうだ。
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 高操業が続く造船業界にあって同社の業績も順調に推移しており、直近の平成19年3月期では売上が107億7400万円の過去最高を記録した。今期も「新会社スタート時の1・5倍に相当する120億円以上」(同)の目標に向け、フル稼働の状況が続いている。
 信濃川河口に面し11万1000平方mの敷地を有する同社は、2本のドックがあり、1号ドックが新造船・修繕船、2号ドックが修繕船専用。また2号ドック北側にある船台では500t未満のアルミ船の建造および修繕を担当している。今年8月には1号ドックの能力増強が認可されたことを受け、これまでの年間5隻の建造能力を6隻体制に引き上げる計画だ。
 同社・中村啓二工作部長は「もともと漁船や特殊作業船の建造を中心に展開してきたが、05年頃より1DWTクラスのバンカータンカーなど商船も手掛けるようになってきている。現状では2年先までの仕事量を確保しており、いかにドック内作業を効率よくこなしていくかがポイントだ」と言い、現状、約2ヵ月半かかっているドック内作業を2ヵ月に短縮できるよう作業内容の改善、改革に取り組んでいる。
 同工場は前述したように元々が小型船建造を得意としてきただけに、「小さい船を効率よく造る」(中村部長)ことをコンセプトに、様々な創意工夫や独特の工場配置、工法を確立し、他の造船所とはひと味違うものづくりを進めている。
 例えば、他の大型造船所でよく見られる鋼板用水切りヤードがここでは存在しない。通常、各種鋼板は海上輸送するが、ここではトレーラーよる陸送が行われているのだ。
 同社の敷地は信濃川水面より1.5m程度低いという造船所としては極めて珍しい立地となっている。確かに岸壁ヤードやドックは埋め立て高さを確保しているものの、敷地内はどうしても段差が生じてしまう。そのため額面通りに敷地をフル活用することは出来ず、同社ならではの工夫やアイデアが施されている。その代表的な建屋が切断加工や曲げ加工、板継ぎ溶接などの上流工程を行う第一内業工場で、変則的な2階建て構造となっている。
 鋼板を積載したトレーラーは工場横のスロープを通り、まず2階部分のストックヤードで荷下ろしし、建屋2階で各種部材の切り出しや開先加工などの切断作業および曲げ加工を行う。次にワークはクレーンにより1階に移され、サブマージ溶接法による板継ぎ加工が行われる。ワークの流れから見れば決して効率的とは言えないものの、限られた立地条件・スペースの中で、それに応じた最善の対策や創意工夫を講じることにより、独自のものづくり態勢を確立、それがそのまま同社の特徴となっている。
 中村部長は「これまでは比較的小型船が中心だったが、最近では船種・サイズも変化してきている。現状が決してベストだとは考えておらず、常に効率化を考慮した改善を進めていきたい」と言う。
 ちなみに切断ステージでは、開先加工対応型250Aプラズマ切断機(写真)と4kWレーザ切断機を導入しており、板厚13ミリを分岐点とするとともに、開先加工の有無で使い分けているそうだ。なお同社では、さらなる高効率化と切断性能の向上を図るため、新たに500Aプラズマ切断機の導入を計画している。
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 一方、溶接機器関連では3台のサブマージアーク溶接装置をはじめ、500Aクラスを中心とした炭酸ガス半自動溶接機60台、交流機300台やティグやミグ溶接機器などを保有。「鋼材使用量は年間1万tで、溶接材料ではFCWを中心に月間約10t弱使用している」そうで、この地区おけるFCWユーザーとしては群を抜いた存在だと言える。
 このほか組立工場(写真)での平行部ブロックのパネル製作工程では、独自のミニ単板ロンジ先付工法を採用。幅2.6×長さ11mの単板3枚をFAB溶接法でつなぎ合わせ、そこに2〜3本のロンジを配し走行台車にて溶接していく。「大型造船所のような多電極ラインウエルダーではなく、自社のものづくりに応じた製造方法を確立していく」(中村部長)と言う。また、「もし低水素系で作業性がよく、ヒューム対策にも優れた溶接棒が開発されれば、もう一度グラビディ溶接にもチャレンジしてみたい」とし、材料メーカーにも開発を要望しているそうだ。
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 その一方で、近年の急激な仕事量の増加や内容の変化に既存設備だけでは対応しきれなくなってきていることも事実で、同社においてもここ数年間で積極的な設備投資を展開。「組立工場の新設や650tクローラクレーンの設置など、設備の増強・充実を図ることで生産能力を高めた」とし、今後もIMO塗装基準採択という業界動向を視野に入れながら、塗装関係設備の強化・充実にも着手していく考えだ。
 このように繁忙を極める同社であるが、最大の課題はやはり人材確保と育成だ。
 とくにぎょう鉄や歪み取りなど造船業特有の高度熟練技能の伝承をいかに進めていくか、が重要テーマとなっている。本多部長は「造船関係が集まる瀬戸内や九州と異なり、新潟地区には造船関連企業も少なく、すぐに経験者に巡り会えることはほとんどなく、毎年10人前後の新入社員を採用しているものの、即戦力というわけにはいかない。しかも大手企業のような技能伝承制度やマニュアルがあるわけではなく、実作業に即したOJTが中心となる」とし、高効率、高品質なものづくりを進める上でも現有戦力のスキルアップが大きなテーマだと言う。

出典:溶接ニュース
2007年9月18日第2731号 
 
 

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