工場探訪ルポ

■電興製作所(栃木県鹿沼市)

【ユーザールポ】
パラボラアンテナ製造

デジタル放送移行の追い風
多岐にわたる技術力
溶接作業者訓練の徹底

 アルミニウム合金は腐蝕に強く、しかも軽量。多岐にわたる用途への応用が可能である。そのなかで電気・通信関係におけるアルミニウムの適用も進んでいる。そこで今回は地上デジタル放送用パラボラアンテナをはじめ、自動車電話移動用アンテナなど各種アンテナ製作、タンクローリー用タンクの委託製造など各種アルミニウム溶接事業を展開する、電興製作所を訪問。生産部組立グループ倉井義明課長から、作業者の技術力向上への取り組みなどについて話を聞いた。

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・倉井義明課長

 電興製作所(栃木県鹿沼市茂呂637ー1)は栃木県鹿沼市の南東部にあり、東北縦貫自動車道鹿沼インターチェンジにほど近い。
 敷地面積は1万1991平方メートルを有し、敷地内には3棟の工場と事務棟が並んでいる。第1工場は難削材(チタン、ベリリウム銅、SUS316など)の切削加工を行う機械工場。第2・第3工場はパラボラアンテナなどの溶接作業を行う板金工場。第1・第3工場、事務棟の2階部分はそのほかアンテナ類の組み立て工場となっている。建屋の総面積は4709平方メートルで、現在、従業員73人が勤務している。直接溶接に係わる従業員は約15人となる。  
 さて、作業現場を案内してもらうと、パラボラアンテナなどの比較的大型な構造物がティグ溶接・ミグ溶接により溶接される光景に驚かされる。

 パラボラアンテナの鏡面部分の直径は基準によって規格が定められている。「当社では直径300ミリ〜5・5メートルまでの製品を製造している。同じ直径でもパラボラアンテナは風速に対応するためにバックフレームに補強を施す。このため、構造が異なる場合も多く、品目が順次入れかわる。品種の多さに対応するには人の手による溶接が効率的だ」(倉井課長)と語る。
 鏡面部分は直径2・4メートルまでのものは一枚板で、それ以上のものは二枚を溶接し、絞り加工を施す。バックフレーム部分はパイプを切断し曲げ加工を施工、溶接した後、鏡面部分とバックフレームをボルト締めと溶接で接合させ、製品とする。

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・パラボラアンテナのバックフレーム部分の溶接作業

 鏡面部分については電波の反射を考慮し、鏡面内側の凹凸をプラスマイナス1・5ミリ、幅3ミリの中に納めなくてはならない。衛星アンテナではその精度はさらに高くなり、凹凸はプラスマイナス1ミリ、幅2ミリの精密さが必要とされる。

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・パラボラアンテナの鏡面部分

 同社は20年間にわたり母材の熱ひずみのデータを収集し、溶接条件を確立した。そのデータを元に、同社の機械部門で独自に治具を作成。機械製作のノウハウから高精度で安定した治具によって、アンテナのひずみに対応することを可能とした。同社では溶接機を半自動溶接機4台、ティグ溶接機18台、ミグ溶接機17台、スポット溶接機3台を保有し、ダイヘン、松下溶接システム製溶接機を使用している。現在、パラボラアンテナ受注の増加と溶接作業者の増加を受け、新たな製作ライン構築に向け溶接機の順次導入し入れ替えを図る方針だ。
 また、ロボットについては、16年前にアルミ・ステンレス用に導入したが、当時の性能は実用に不向きだった。現在はタンクローリー製造のため3年前に再度導入した。「人ではひずみ修整などに時間がかかったが、溶接条件、時間など製作台数の安定、品質の安定向上につながった」(同)と語る。導入したロボットはアルミ溶接用に安川電機製、ステンレス溶接用にファナック製の2台を保有している。このように新機導入を図る同社ではあるが、やはりアルミニウム溶接の根幹となるのはティグ溶接・ミグ溶接である。同社は溶接技術者の訓練について、積極的に向上を心掛けている。
 溶接作業者はアルミニウム・ステンレス溶接資格の専門級を基準に、約15人のほとんどが取得し、作業を行うのは有資格者のみに厳選されている。同社では軽金属溶接構造協会の検定会場として開放することもあり、各作業者は各資格を2〜5種類取得し、毎年数回にわたり資格取得・継続を行うことで訓練のサイクル化を実施。日常作業のほか、管理者による実技教育など日々訓練を行っているため、同社作業者の練度は高い。
 また、同社では溶接作業者を人材派遣で迎え入れる場合もあるが、そのような作業者にたいしても作業訓練を行い技術のバックアップを図り、育成を推進している。
 「当社のメーンとなる作業はアルミ溶接であり、技術向上が望まれる。また、契約する作業者もその技術を身につけることで、他の企業でも技能が通じることになる」(同)と、作業者育成への積極的な姿勢が感じられる。
 昨今話題となる07問題については、技術ノウハウの引き継ぎが課題であるとして、今年退職する作業者を1人、嘱託指導員として自社内での実技指導に充てる。「主な部分での作業には十分な練度があるが、ベテランでなくては見えない部分もあり、今後3年間で習得を図りたい」(同)と語る。品質管理についてもISO9001:2000を登録。今後は2007年6月を目標にISO14000取得準備に入る。

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・完成したパラボラアンテナが並んでいる

 今後の展望については、「パラボラアンテナは月産40面。現在、2011年のTVのデジタル放送完全移行に向け、その需要は伸びており業績は毎年約10%伸長している。パラボラアンテナの生産は04年の300面から、05年の500面と増加を始め、06年度も500〜600面の生産を予想し、ピーク期と見込む。しかし、07年には落ち着く可能性もあり、その後に向けての情報収集が肝心」(同)と語る。 
 現場では、習得する資格の種類について拡大を目指す。そのほか、「アルミ部品の受注の取り入れには力を入れていく。当社はアンテナ以外にもLNGタンク、回転足場など多岐にわたる製品を製造したノウハウがあり、今後も多様な製品に対応する技術力がある」(同)とパラボラアンテナにこだわらず、新たな分野への意欲も旺盛だ。




出典:溶接ニュース

2006年10月31日第2688号


                       
                                              

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