工場探訪ルポ

■三井造船千葉造船工場

壮観の1000tクレーン

建造能力「5年で1.5倍に」


【千葉発】都心からおよそ1時間の京葉工業地帯の一角に、造船所では日本最大、海外を含めても最大級を誇るクレーンがあることをご存知だろうか。壮観の“スーパークレーン”に近づくことを許された記者は、頭上にある数百?の船体ブロックに圧倒されながらも活気に満ちた場内を回った。
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 三井造船千葉造船工場(千葉県市原市)は1962(昭和37)年の操業開始以来、68年に日本初の大型船建造ドック(50万重量t型)が完成、74年には単一造船所として年間進水量(223万重量t)が世界一を記録した由緒ある造船工場だ。
 今年初めから2号ドックで稼動を開始した1000tゴライアスクレーンは、船体ブロックをこれまでの600t(300t×2基)から1000tに大型化し、ドッグ内への搭載ブロックを少なくするとともにドック期間の短縮を実現。「ちょっとした船一隻分」(小俣和夫工場長補佐)を投資しただけあって、20%以上の建造能力向上に貢献するという。
 一昨年秋、鉄構工場を大分に集約したことにともない、空いたスペースを船の建造に充て、昨年はレーザ切断機を2台導入(切断機は合計7台。うちレーザが3台)。このほか溶接用の定盤や溶接機なども新たにそろえ「ここ5年で建造能力はおよそ1.5倍になった」
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 千葉造船工場では建造数が一番多いバルクキャリアーをはじめ、タンカー、LNG船も手がける。能力増強の背景には世界的な船舶需要の拡大はもちろんこと、船の大型化も大きく影響しており「バルクキャリアーやタンカーと同様に、LNG船もアルミの球形タンクがだんだん大きくなる傾向にあり、球形に仕上げるための治具は従来のものを改造して対応し、溶接機も買い替えた」
 場内に案内されると、完成したアフラマックスタンカーとともに建造中のケープサイズバルカーが目に飛び込んできた。ケープサイズの脇には、1000tゴライアスクレーンが我が物顔で陣取り、想像していたよりもスムーズな制御で巨大な搭載ブロックを次々に運搬していた。
 今後の旺盛な新造船マーケットの拡大に対応する建造体制を着々と整備する一方で、小俣氏は、船特有の?複雑さ?に変わりはないと指摘する。
 「船は複雑であり、不確実性が高いもの。それを端的に示す例として部品の数を挙げると、自動車のおよそ2万点に対し、船はその10倍の20万点に及ぶ。この複雑さから、どんな組み方をしても最適解がない。また当然、条件が変わればつくり方の最適解も変わってくるわけだが、逆に言うと、溶接をはじめとする要素技術が変わればベターなものになるかもしれない」
 かつて「日本のお家芸」と言われ、技術力では他の追随を許さず、世界一高い人件費を投じて世界で3割のシェアを維持しながら最適解が出せない「造船」。小俣氏はいま、日本溶接協会で溶接・生産技術の革新に取り組んでいる。

出典:溶接ニュース
2006年10月24日第2687号

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