工場探訪ルポ

■名村造船所伊万里事業所

9万平方m拡張
17万重量t、月1隻ペースに


【佐賀発】「“伊万里”と聞いてまず何が思い浮かぶ」。取材先へ向かう車中、タクシー運転手の問いに「焼き物」を連想したが、帰京の途につくころ、記者の脳裏には「NAMURA」の文字が深く刻まれていた。
%88%C9%96%9C%97%A2%82Q.jpg
 9月上旬、真夏を思わせる日差しが照りつけるなか、JR有田駅から単線・一両編成の松浦鉄道に揺られ、のんびりとした田園風景を眺めながら伊万里駅に到着。タクシーに乗り継ぎ、周囲を玄海国定公園の美しい海岸線に囲まれた名村造船所伊万里事業所(佐賀県伊万里市黒川町塩屋5番地1)に入ると、その繁忙さを裏付けるようにさまざまな作業の音が響き、700tクラスをはじめとする運搬台車がひっきりなしに往来していた。
 3年前に受注した安い船価の影響と資材値上がりの板挟みで造船各社は苦戦を強いられてきたが「急激に船舶需要が上昇し、『何とかなるのでは』との明るい見通しが立ってきた。いま受注している船は、主要な造船所が実力を発揮すればかなり収益も出る環境が整備」(生産技術部の山田誠部長)されており、引き渡しベースの手持工事量が2010年半ばまで決まっている同事業所でもここにきて活況を反映した取組みが目立つ。
 山田氏によると、同事業所では昨年9月までにおよそ9万平方mの拡張工事を完了している。
 「800tのゴライアスクレーンを1基増設したのにともない、従来の300tクレーン2基のうち1基は新しい総組立場へ移設した。拡張した9万平方mには先行艤装工場、塗装工場、ブラスト工場を新たに設けた」
 仕事量の増加は人員拡充にも反映され「ここ1―2年は当社の規模としては比較的採用が多く、今年は高卒45人、大卒・高専卒13人を採用」。とくに高校生は伊万里市をはじめ隣の唐津市、武雄市からの採用がおよそ8割に上る。また人が増えたことで「新たに拡張した総組立場や先行艤装工場ではCO2の溶接機を70台程度新たに導入した」
 このほか大組立ブロックの搬送を可能にする700t重量物運搬台車を2台、NC切断機を3台など昨年度の投資額は60数億円に上るという。
 「これらの設備増強によって、17万重量tクラスのケープサイズをほぼ月1隻ペースで建造できる能力を整えた」。書き入れ時を捉えた“攻めの経営”が事業所内の活気を一層後押ししているように映った。
%88%C9%96%9C%97%A2%82P.jpg
 同事業所は社員約970人、協力業者約760人のおよそ1730人を要し、船舶海洋事業部門の売上高は年間およそ500億円に及ぶ。有田や伊万里の焼き物の売り上げを合計しても年間約100億円であることからも周辺地域にとって同社の存在がいかに大きいものであるかがわかる。
 奇しくも駅から同事業所までのタクシー運転手は「名村造船所の元従業員」と名乗り、復路の運転手は「21歳の長男が名村で働いている」と語った。記者にとって伊万里は終始「名村の町」だった。

出典:溶接ニュース
2006年10月10日第2685号

お勧めの書籍