工場探訪ルポ

■媚山鉄工(旭川市)

【ユーザールポ】
仕口自動反転溶接システム

ロボット導入は将来への備え

積極的な設備投資で顧客の要望に応える
 

 ロボットをコアとして周辺装置と組み合わせた溶接・切断システムの新商品を次々と世界に向けて送り出す、コマツエンジニアリング産業システム事業部(本社TEL:044―542―7293)が新たに市場投入した仕口自動反転溶接システム「Auto-Reverse」は、ポジショナーに鉄骨仕口を一度セットすると上面・下面・ウェブ面の全工程が自動で溶接可能なシステムに仕上がっている。小紙は昨年10月、「Auto-Reverse」を導入した、媚山鉄工(旭川市東旭川北3条6―5―10)を訪ね、媚山正人社長に導入に至った経緯や新システムのメリットなどについて取材した。

 

3月上旬。9時過ぎに到着した旭川空港付近は氷点下1・8℃を指していた。そこから雪に覆われた田園風景を眺めながら車で20分ほど走ると、工場壁面の「KOBIYAMA」の文字が目に飛び込んでくる。

媚山鉄工は、創業1951(昭和26)年。加工能力は年間約8000tのMグレードファブだ。

まずは媚山社長に新システム導入の経緯について聞くと、話はおよそ1年前にさかのぼる。

「そもそもの発端は昨年4月の『2006国際ウエルディングショー』。実はその直前からロボットを購入すべきか否か検討していたところ、出展者リストの『コマツエンジニアリング』を見て、『そういえば以前、北陸の鉄工所にコマツのロボットを見に行ったことがあった』とふと思い出し、展示ブースに足を運んだ」

ここで媚山社長は、それまで購入を検討していた他社製品との違いに気づく。

「一番わかりやすいのは、一方は鉄骨の仕口を人手によって動かさなけらばならない、いわば『半製品』。もう一方のコマツエンジニアリングは、ポジショナーに一度セットすれば自動で溶接できる点で『完成品』という印象を持った」

この後すぐ、媚山社長は、秋田のファブで活躍する仕口自動反転溶接システムを目の当たりにする。

「訪問した工場は、7台のロボットを駆使して当社の倍くらいの仕事をこなしていた。関係者によると夜間は2人配置すれば、ポジショナーに仕口を乗せ自動溶接が終わるのを待って次の仕口に交換できる。こうした使い方にほれ込んで購入を決断した」

溶接ロボットについて語る媚山社長は「誰もが言うことだろうが」と前置きしたうえで2007年問題にも触れた。

「当社の従業員数は現在45人。このうち定年延長した者も含め50代以上が15人を数える。若い人を意識して採用しているものの、今後10年で会社の様相が変わることは間違いない」

媚山社長は「45人から減ってもかまわない」と述べるとともに、ロボット導入と一対で用いられることの多い生産性向上に関して「大した問題ではない。あくまで将来に対する準備の一環」と強調する。

「極端な話、35人でもいいと思っている。ただ業務だけは滞りなく進めたい。難易度の高い溶接とともに工場内のいろいろな作業をこなすには10年はかかる。ここに要する時間だけは無視できない。当社では外注はしないというポリシーがある以上、ロボットへの置き換えに行き着いた」

 もともと新しい設備機器の導入には積極的だ。

 「当社はCADも旭川でいち早く導入し、パソコンの更新も頻繁に行っている」

 比較的早くから設備投資に積極的な姿勢は「社内の活性化を図る」ことに加え、媚山社長の性格にも起因している。

 「私の方針として車などは別にして、中古品は買わないことにしている」

 一昨年はHの開先加工機、昨年は今回のロボットとコラムの開先加工機を相次いで導入している。

「5000万円単位となると話は別だが、年間1000―2000万円程度であれば、ファブリケーターという商売柄、ある程度はしかたがない。ここ数年は設備機器の更新が続いているが、こうした取り組みは相手にも伝わり、それなりに受注する仕事にも反映される。つまり、『できません』というのではなく『何とかしましょう』と顧客の要望に応える姿勢が一貫していること。受注生産の場合、日々の積み重ねによる他社との違いが、評価を受けるものであると心がけている」

 昨年の設備投資はおよそ8000万円を投じた1996年以来の大型投資となった。同社が受注する物件は「大まかに言って、9対1でコラムが多い」。したがって導入時から新型システムに寄せる期待は大きかったが「どういうわけか、従来の受注パターンと異なり、新しいロボットが本格的に稼動したのは2件にとどまっている」

 とはいえ、大組は別にして、「仕口に関しては、仕事がないのは問題(笑)だが、使い慣れて何の問題もない。コア部の溶接の8割はロボットで対応できる」。また4年前に導入しているロボットは改良を加えベースプレートなどで活躍している。

ロボットに関しては柱大組の見積りを取り寄せており導入に前向きな姿勢を見せる。

 「現状で当社の売上高はおよそ15億円。今後、20億円には届くと見ている。実は昨年、『もう一段上の会社になろう』と社内で話した。Hグレードの取得に向け準備を進めていることもその一例に挙げられる。どちらかといえばもう一段上を目指す自分を奮い立たせる意味合いが強く、単に20億円の売上げを達成したいということではない。無理をしないで自然にそうなればいいと思っている」 取材中、媚山社長はファブリケーターの経営者として「経営者はわきまえることが大事」と繰り返した。

 「全国のファブリケーターを眺めても売上高100億円はごく少数であり、多くはそう大差があるものではない。また悔しいけれど下請であることは厳然たる事実だが、実際は自分で生きていくしかない。地道に生きていくこととある程度の設備投資の『バランス』がキーワードだ」

自らをわきまえつつも設備を更新しもう一段上を目指す。一貫したポリシーに裏打ちされた語は興味深く、帰り際に聞いた「うちは社員の固定性が良い。社員のほとんどが持ち家で、20代でも家を建てている。地味なんだけど」というエピソードも頷ける。


出典:溶接ニュース
2007年3月27日第2708号

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