天地人 (ライブラリ)

今年上半期の3冊

 毎日出版されている膨大な数の本。その多くに目配りすることは到底不可能なことだが、今年上半期に読んでおもしろかった本の中から3冊を選んでみた▼中村安希『インパラの朝』26歳の女性が一人で684日間にわたりユーラシア大陸からアフリカ大陸へと47カ国を旅してきた話。その旅行自体もすごいが、この旅行記がすばらしい。旅人は、健全な常識と教養を持ち理性的だが、何よりも胆力があった。本書は新しい時代の旅を見事に描ききっている。大きな感動をもらった(集英社刊)▼藤原正彦『名著講義』いい本を読ませてもらったというのが第一印象。著者が教授として勤務先のお茶の水女子大学で行ってきた読書ゼミの内容が収録されている。講義をする教授の魅力が本書をいきいきとしおもしろくしていることは言うまでもないが、受講する学生たちもなかなかで、両者のやりとりは巧まざるユーモアもあって楽しい(文藝春秋刊)▼大江健三郎『水死』「晩年の仕事(レイト・ワーク)」と著者自身が位置づける小説。本作もいっぱいの仕掛けがあり、小説のおもしろさがいっぱいに詰まっていて老練な作家の手になる小説だ。話は冗漫なのだが、読み飛ばさせない緊迫感もあって、相変わらず達者だ。話は簡単だが、大江の小説は相変わらず難しい(講談社刊)

バックナンバーへ

お勧めの書籍