天地人 (ライブラリ)

アカデミー賞受賞

 今年のアカデミー賞の外国語映画賞に滝田洋二郎監督の『おくりびと』が輝いた。日本映画の受賞は初めての快挙で、この映画を感動して見ていたひとりとして大変うれしいことだった▼映画は納棺師を描いている。といっても大方の人がそうだろうが、納棺師という存在は実はこれまで知らなかったし、納棺にはこれまでの人生で幾度か立ち会ってはいるものの、納棺という所作が具体的にどういうものだったか鮮明な記憶がなかった。それがこの映画では詳細に描かれている▼納棺という仕事柄、そこではいくつもの死と立ち向かうこととなるし、遺族との葛藤とも直面するが、映画を見て率直に思ったのは、死生観などということもさることながら、納棺師の様式美に驚かされるとともに、日本の葬儀の美しさにも感心したものだった。暗い主題も時にユーモアも交えて観客の胸の奥を揺り動かす滝田監督の演出がよかったし、主演の本木雅弘は、劇中で「おまえには転職だ」と言われたそのままのはまり役だった▼アカデミー賞はアカデミー会員5千8百人の投票で決まるらしいが、日本という異宗教異文化に対しても固有の文化を尊重し、きちんと評価を下す姿勢には感心したし、我々日本人こそがもっと我々の文化を知り自信を持つことが大事だと考えさせられた次第でもあった。

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