天地人 (ライブラリ)

「良い赤字」

 このたびの金融危機に伴う世界同時不況では様々な論調が各方面から出されているが、この中から印象深かったもの、おもしろかったもの二つ▼一つは、『文藝春秋』3月号の新日本製鐵会長三村明夫氏『「良い赤字」で日本を復活させよ』で、景気回復まで企業は何をするべきか、それは「良い赤字」を出すことだとし、赤字決算とは急激な在庫調整を行った結果であり、財務状況が健全なうちに膿を出し切ってしまうことができる体力があったということだとし、かつてのバブル崩壊時には余力がなく在庫を抱えたまま不良債権処理もできなかったと指摘している▼三村会長はまた、日本では企業同士の産業連携が機能していて、一つの製品が誕生するには長期間にわたる安定的信用関係が必要で、株主の利益を極端に重視するアメリカ型経営では産業連携は難しいと続けている▼同じように中谷巌著『資本主義はなぜ自壊したのか』でも、均質性の高い社会、企業と従業員、企業間などの長期的信頼性が高品質の製品を生み出していると指摘している。中谷氏は小泉構造改革の急先鋒だった人だが、本書ではその改革は間違いだったとし懺悔しているのだが、今こそ日本的良さに修復していくべきだと展開している。日本型とアメリカ型、目指すはその「ハイブリッド経営」ということか。

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