天地人 (ライブラリ)

リンカーン社の精神

 アメリカの知人からメールが届いた。ビッグスリーのお膝元であるデトロイトで溶接機材の製造会社を経営している▼お互いにファーストネームで呼び合う仲なのだが、その彼からのメールによると、アメリカ溶接業界ではこの頃の売上は約30%も落ち込んでいて、少なくとも年の半ばまでは回復することはないと予想しているとあり、たぶんそれより長く影響を受けるだろうとも。また、多くの会社が従業員を一時解雇しているともあった▼さらに続けて興味深いエピソードが書かれていた。リンカーン社は過去約百年間にわたって従業員を解雇しない主義を貫いているのだという。1929年の大恐慌時には週1日半に労働時間を短縮し、1970年のオイルショックによる不況時には工場従業員がガソリンスタンドや自動車販売店で営業マンとなって働いたのだという▼かつて一度訪れたことがあるのだが、世界最大の溶接材料・溶接機器のメーカーであるリンカーン社の本社工場はオハイオ州クリーブランドにあって、まるで公園の中にあるのではないかと思わせるほどの景観で、案内してくれた社員は確かに「家族主義が経営の特徴だ」と語っていたことを今更に思い出した▼日本でも人員整理が常態化している今日、リンカーン社の精神が尊重されるよう願ってやまないところだ。

バックナンバーへ

お勧めの書籍