秋葉原日記 (ライブラリ)

『第九』

 クリスマスイブの24日、上野の東京文化会館で東京都交響楽団の演奏によるベートーベンの交響曲第九番「合唱付き」を聴いた。大野和士指揮で、ソプラノ天羽明恵、メゾソプラノ小山由美、テノール市原多朗、バリトン堀内康雄に合唱は東京オペラシンガーズだった。
 第九は、レコードやCDあるいは放送で聴くことはたびたびだが、演奏会に足を運んで聴くのは実はこれが初めてのことだった。
 オーケストラの都響、コーラスの東京オペラシンガーズいずれも日本を代表する一流の演奏とあってすばらしい内容だった。
 都響の演奏会は4月のサントリーホール(シベリウスの交響詩「フィンランディア」ほか)以来今年2度目だったが、第九は毎年行っている演目でもありさすがに練り込まれているようで充実していた。
 第九は演奏時間が70分近い大作だが、第一楽章、第二楽章と口ずさむほどに聞き慣れた主題がリフレインされるし、それも雄大で力強いから、まるで自分でタクトを振りたくなるほどに親しめて楽しかった。
 それに第三楽章は豊かな情景がゆったりと広がる様子で、これはこれで味わい深いものだった。
 そして第四楽章の途中に至ってついに歓喜が爆発する。歌唱が付いているのはこの第四楽章のみで、ここまで待機していたバリトンがすっくと立ち上がり「歓喜の調べを歌おう」と歌い出すと、それを合図にコーラスも立ち上がり、残る3人のソリストも続く。このあたりのスケールの大きさは第九の第九たるゆえんのものと思われた。
 それと、第九は師走のこの季節に似つかわしいもののようで、いっそう情感が増すようでもあった。
 この第九は日本ほど、それも決まって暮れに演奏されるというのは、実は日本以外ではあまり習慣としてないものなそうだが、我が国では今や第九は年末の国民的行事といってもよいほどに親しまれている。
 第四楽章の歌唱を聴いていると、実は正直なところ歌詞の意味は詳しくはわからないのだが、歓喜の歌であると同時に、希望を求める励ましの歌のようにも受け止められた。
 その意味で、この第九は平和を願う日本に定着したのであろうし、とくに東日本大震災を経験した今年においては、第九は歓喜の歌であるばかりか、鎮魂と希望の歌としても似つかわしいもののように感じられてことのほか印象深いものだった。

daiku.jpg
(都響の第九=演奏開始直前の模様)
 

バックナンバーへ

お勧めの書籍