秋葉原日記 (ライブラリ)

トム・ロブ・スミス『エージェント6』

 ソ連国家保安省のエリート捜査官レオ・デミドフを主人公とする3部作の3作目。1作目の『チャイルド44』を面白く読んでいたし、2作目の『グラーグ57』は読んでいなかったが完結編だというし、大胆そうなその後の展開が気になって再び手にした次第。
 デミドフはその後国家保安省を退官し企業に勤務していたが、特権的地位を放棄までしたのはライーサとの恋。ライーサが教師をしているところを見初めたのだが、ライーサはデミドフの職業に嫌悪感を持っていたのだった。そして結婚後、ゾーヤとエレナという二人の娘を養子にもらっていた。
 歳月を経て、ライーサは教育者としての地位を上り、ソ連の代表として合唱団を率いて渡米することに。合唱団には二人の娘も加わっている。
 東西冷戦のさなか、ソ連、アメリカ双方に思惑のあるのは当然で、ソ連としては共産主義体制の優位性を世界に示すプロパガンダの絶好の機会ととらえていたが、デミドフにとっては家族の訪米には強い懸念があった。
 デミドフの懸念は現実のものとなり、ニューヨークの国連本部で行われた合唱は大成功だったのだが、ライーサはある事件に巻き込まれ拳銃で撃たれ殺害されてしまう。
 ライーサ殺害の真相を突き止めようと起ち上がったデミドフ。本書はデミドフとライーサとの深い愛と固い絆を根底にデミドフの追跡行が物語の中心である。
 しかし、自由な旅行などできない冷戦下のこと、果たしてデミドフは真相にたどり着けるのか。そしてラストには深い叙情が待っていた。
 本書にはたくさんのエピソードが盛り込まれている。時には伏流水となっていたものが重要な意味を持って現れてくる。とにかくじっくりと読み進むほどに大きな物語世界を味わうことができる。
(新潮文庫上・下巻)

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