秋葉原日記 (ライブラリ)

茨木のり子『倚りかからず』

 1999年に出版された際、詩集としては異例といえるほどのベストセラーになった。その後、2007年に文庫に収められたが、それも本書では8刷りを数えるに至っており、もとより戦後日本を代表する女流詩人ではあるのだが、息の長い支持のあることがうかがえる。
 いったいにこの人の詩は言葉遣いは平易で慈しみに満ちているが、中味ははなはだ厳しい。しかも、題材は周辺にとって親しみやすいのだが、そこには凛とした美しい立ち居振る舞いが感じられる。
 やはり、改めて読んでつくづくこの人の強さには感心させられた。
 茨木は1926年生まれ。40代だったのだろうか、代表作「わたしが一番きれいだったとき」では焼け跡に毅然とたたずむ姿が印象的だったが、本書を上梓したのは73歳。
 表題作の「倚りかからず」では一層自立している詩人の姿が率直に描かれている。以下に全文を引用しよう。
 もはや
 できあいの思想には倚りかかりたくない
 もはや
 できあいの宗教には倚りかかりたくない
 もはや
 できあいの学問には倚りかかりたくない
 もはや
 いかなる権威にも倚りかかりたくはない
 ながく生きて
 心底学んだのはそれぐらい
 じぶんの耳目
 じぶんの二本足のみで立っていて
 なに不都合のことやある
 倚りかかるとすれば
 それは
 椅子の背もたれだけ
(ちくま文庫)

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