1999年に出版された際、詩集としては異例といえるほどのベストセラーになった。その後、2007年に文庫に収められたが、それも本書では8刷りを数えるに至っており、もとより戦後日本を代表する女流詩人ではあるのだが、息の長い支持のあることがうかがえる。
いったいにこの人の詩は言葉遣いは平易で慈しみに満ちているが、中味ははなはだ厳しい。しかも、題材は周辺にとって親しみやすいのだが、そこには凛とした美しい立ち居振る舞いが感じられる。
やはり、改めて読んでつくづくこの人の強さには感心させられた。
茨木は1926年生まれ。40代だったのだろうか、代表作「わたしが一番きれいだったとき」では焼け跡に毅然とたたずむ姿が印象的だったが、本書を上梓したのは73歳。
表題作の「倚りかからず」では一層自立している詩人の姿が率直に描かれている。以下に全文を引用しよう。
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
(ちくま文庫)
A5判
314頁
ISBN:978-4-88318-560-3
価格:2,640円(本体価格:2,400円)
A4
138
ISBN978-4-88318-063-9
価格:2,200円(本体価格:2,000円)
溶接学会 溶接法研究委員会
B5判
258頁
ISBN:978-4-88318-060-8
価格:13,200円(本体価格:12,000円)