秋葉原日記 (ライブラリ)

小澤征爾・村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』

 格別のクラシック音楽ファンというのでもない、いわばずぶの素人が読んでも面白くて楽しく読んだ。音楽を題材にしていてこういうことは、やはり一流のものだけが持つ二人の魅力のなせるところなのであろう。
 話題は小澤に村上がインタビューするという形で進んでいる。インタビューは数回に分けて行われており、場所も村上の神奈川にある自宅だったり、都内の仕事場だったり、あるいはハワイやスイスなどだったりしている。また、インタビューは大概の場合話題にするレコードやCDを聴きながら行っている。
 小澤を相手に話し合うというのはよほど音楽についての力量が必要なこと。村上自身はずぶの素人と断っているが、とんでもない、村上のジャズ好事家ぶりはつとに知られるところだが、クラシック音楽についても随分と造詣が深い。
 小澤が音楽について面と向かって根掘り葉掘り聞かれることは意外に少ないもののようで、村上の探求の結果、小澤自身が音楽に対するとらえ方や感想を再確認することともなったようで、このことについて小澤自身が率直に感心していたことも面白いことだった。
 時には、村上が理屈を詰めていこうとすると、小澤は「あのね、あなたとこういうことを話していて、それでだんだんわかってきたんだけれど、僕ってあまりそういう風にものを考えることがないんだね。……楽譜に相当深く集中します。……ほかのことってあまり考えないんだ。音楽そのものことしか考えない。……」と言っている。
 また、小澤の数多くの興味深いエピソードが盛り込まれていて楽しい。シカゴではたくさんのブルースを聴いたとか、森進一が好きだなどというものまである。
 中には、村上が披露した音楽と文章作法などというものまであって、村上は「何から書き方を学んだかというと、音楽から学んだんです。それで、いちばん何が大事かっていうと、リズムですよね。文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まないんです」と語っていて、これは興味深かったし同感できた。
(新潮社刊)

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