秋葉原日記 (ライブラリ)

フェルメールからのラブレター展

 先日の仙台出張のの際、ちょうど折から宮城県美術館で開催中のところを見る機会があった。
 この展覧会は、今年6月から10月まで京都で開催されていて、その後、仙台に巡回されてきていた。京都開催中は、大阪にはたびたび行っていたのに、京都にはなかなか出向く機会がなかった。また、この先、年末には東京に巡回してくるのだが、フェルメール好きとしてはそれまで待てなかった。
 コミュニケーションを主題にした展覧会構成で、会場には17世紀オランダ絵画が40数点展示されていたのだが、それを順に見ていって最も奥まった場所にたどり着いたらオーラが発せられているように感じられた。そこがフェルメール作品の展示室だったのである。
 フェルメール作品は3点展示されていた。いずれも手紙をモチーフにしたもの。
 「手紙を書く女」は、手紙を書いている若い女性がその手を休めてこちらを見て軽くほほえんでいる。この女性が着ている黄色い衣装が実にすばらしい。その柔らかさ、輝き、色具合、どれをとっても質感が豊かに感じられる。
 「手紙を書く女と召使い」は、手紙を書く女主人とその背後に立つ召使い。その召使いの表情が何とも面白い。女主人は返事を書いているのだろうか、書き損じが床に散らばっている。女主人の手紙はラブレターなのであろう、手紙の書き終えるのを待っている召使いの皮肉っぽい笑いが際だっている。
 フェルメール作品にはたびたび召使いが登場していて、いずれにおいてもストーリー性において重要な役割を果たしているが、本作においてはとくに女主人と召使いの関係が印象深いものとなっている。
 「手紙を読む青衣の女」は、窓辺に立って手紙を読んでいる女性が描かれている。どういう内容なのであろうか、表情は深刻そうだ。この女性の身につけているゆったりした上着の青がすばらしい。フェルメールが好んだラピスラズリの青である。本作は修復後初めての展示のようで、この高貴な色が際だっていた。
 フェルメール作品は、いずれにおいても光と陰の使い分けが巧妙で、筆遣いが緻密だし色の鮮やかさはもちろんのこと、一瞬をとらえた表情が印象深い。寓意性も高いのだが、その物語を読み解くのもフェルメール作品の面白さだろう。
 ところで、展覧会場には「フェルメール作品世界分布図」という大きなパネルが掲示されていた。
 フェルメール作品は希少性が高く、現存するもの30数点しかないといわれる。この分布図では36点として表示されていた。識者のあいだではフェルメール作品と特定できるものは32点というのが定評で、最大でも34点というのが多い方の見方だから、ここの36点は不確定のものとして論争中のものまでも含めたのであろう。
 これらの作品は世界中の美術館に散らばっているし、中には個人蔵や行方不明のものまであるからすべてのものを見るのは並大抵のことではなくて、フェルメール好きのあいだでは全点踏破が悲願になっている。しかも日本には1点もないのである。
 自分もフェルメール作品が好きで、海外旅行の折など各地の美術館を訪ねたり、来日した展覧会には必ず足を運ぶようになどしているが、この分布図を元にこれまでに自分が見たことのある作品数を数えてみたら31点に上っていて、見たかどうか印象があやふやなものが2点、見たことがないものが3点となっていた。
 ちなみに、今回展示されていた3つの作品でも、「手紙を書く女」以外はかつて海外の美術館や展覧会で見たことにあるものだった。
 いずれにしろ、会場でざっと数えただけのことではあるが、かなりの数に上っていることは確実で、もう一度じっくり精査してみようと思った次第だったし、ここまできたら、全点踏破も夢でもないとも思ったのだった。

tegamiwokakuonnna.jpg
(「手紙を書く女」=会場で販売されていた絵はがきから引用)

バックナンバーへ

お勧めの書籍