秋葉原日記 (ライブラリ)

江上剛『奇跡のモノづくり』

 日本のものづくりは残るのか、日本に残すべきものづくりとな何か、このテーマを追求して6つの企業を探訪している。
 取り上げられているのは、倒産の憂き目に遭いながらも手作りのクラブにこだわった本間ゴルフ、ワインメーカーが焼酎造りに挑んだメルシャン、下請けの零細企業が独自ブランドを起ち上げるに至る山崎研磨工場、海外移転を考えず国内生産に固執するコニカミノルタ、徹底してナンバーワン製品、オンリーワン製品を追求するクラレ、伝統の商品でグローバル企業を築き上げたキッコーマン。ほかに沖縄編として琉球泡盛と精糖会社が加えられている。
 いずれもものづくりにこだわった企業ばかりだが、そこには一つのものを築き上げた自負と、一流だけが発する独自の語録があった。
 例えば、25年もひたすらシャフトのフィルム巻きをやっている本間のシャフト係は、なぜそんなに長くやっているのかという問いに対し「だんだんと自分の技術がレベルアップして、難しいものを巻けるようになるのがうれしいから」だという。
 独自ブランドを起ち上げながらも下請け仕事を減らそうとはしない山崎研磨は「やっぱり下請けじゃないと技術が伸びていかないんです」と意外な言葉。
 このほか、国内の製造拠点を残すのは、そこにはハイレベルの職人がいるからだというコニカミノルタ、創業以来独自技術開発の社風が揺るがないクラレなどとユニークな企業が多かった。
 著者は経済小説などを得意にする小説家。一流の作家の手になるレポートだけに読みやすく面白かった。
 ただ、レポートは成功譚を集めているからどうしても一般論になりがちで、企業存続の危機からはい上がろうとしている大方の中小企業の現実からは乖離しているようで、オンリーワンも持たずナンバーワンにもなれず苦悩している企業向けの事例も欲しかったように思った。
(幻冬舎刊)

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