秋葉原日記 (ライブラリ)

敦煌

 「敦煌」は北京料理の店。
 自分が秋葉原で最も足繁く通っている店の一つ。昼食となく夜の宴会となく利用する機会は多い。
 それは中華料理が好きでということもあるが、この店が気安く、料理がおいしく、値段も手頃というところにあるかもしれない。女将のおもてなしも申し分ない。
 店は、椅子席と座敷の個室で構成されており、全部で60席ほどか。ときにはお客さんを案内することもあるが、料理もいいし酒もいいからおおむね喜んでもらえる。
 メニューには北京料理の一通りが揃っている。よほどの宴会でもなければ高価な料理を頼むことはなくて、日頃はどうしても中華の定番料理ということになってしまう。
 この店の代表料理ということではないが、自分が好んで注文するものには、餃子、春巻、麻婆豆腐、蟹玉、酢豚、八宝菜といったところか。また、昼にいただくのは決まってタンメンである。これはこの店の人気メニューで、何ということのない単純な味なのだが飽きが来ない。
 料理は全般に北京料理だから味はそれなりに濃い方だろうが、しかし、日本人好みに工夫してあるようでさほどのしょっぱさ、辛さでもない。
 この店は、小社産報佐久間ビルの通りを挟んで斜め向かい、第二東ビルの地階にある。だから、一見の客は入りにくいかもしれない。
 開店は1965年というからもう46年にもなる。第二東ビルが増床された折、地階、1階、2階に飲食店などが出店、そば屋、すし屋、天ぷら屋などといずれもおいしく気の置けない店ばかりだったから随分と重宝していた。
 ただ、当時の店で今日に続いているのはこの敦煌の他わずかとなってしまって、大半は看板が変わってしまっている。継続は力なりとはよく言われるが、敦煌が今日に至っているのは味が保たれているからであろうし、栄枯盛衰の激しい飲食店でこれは希有な例と言えよう。
 ところで、店名のことだが、創業者が知人だった作家の黒岩重吾さんに相談したところ敦煌と命名してくれたのでだそうで、しかも、ベストセラーだった小説『敦煌』の著者井上靖さんにもちゃんと断って了解を得てくださったのだということである。

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(秋葉原風景77=「敦煌」の店内)
  

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