秋葉原日記 (ライブラリ)

故宮博物院

 このたびの台湾旅行中、台北で故宮博物院を見学した。
 博物院は、都心から北へ少し離れた山の麓に抱かれるようにあって、台北最大の観光資源でもある。
 故宮博物院は北京と二つあるのだが、この台北のものは世界四大博物館の一つと称されるだけあって、そのコレクションは陶磁器、彫刻、書画、、工芸などと中国歴代王朝の秘宝や精華がつまっている。
 なお、これらのコレクションは国共内戦の折、北京の故宮にあった財宝から精選して敗走する蒋介石の国民党が台湾に移送したことはよく知られるところ。故宮の文物は、日中戦争下、日本軍の略奪をおそれて中国各地を転々としていたのだった。
 目玉は、そのふくよかさに思わずほほえみが出る灰陶加彩仕女傭(唐)、まるで本物の白菜そっくりで1個の玉からつくられたとは思われない翠玉白菜(清)、17層の象牙球から構成されその精微さに感嘆する象牙透彫雲龍文套球(清)などか。微妙な色合いに惹きつけられる越窯秘色青磁折沿洗(五代)も捨てがたい。
 この博物館を訪れるのは4度目だが、展示品の構成や展示方法、導線などが随分と変わったようだ。
 かつては展示品が膨大でそれこそ1日では見切れないかと思わせられるほどだったが、大胆に整理され展示品が絞られたようで、順路に従って見ていくと目玉品を見落とすことなく短時間でスムーズに回れるようだった。
 ただ、これはいかがなものであろうか。駆け足で回っている団体観光客にとっては好都合かも知れないが、中国伝統の文物をじっくり見たいものにとってはいささか物足りないものとなったし、かえってリピーターが減ることにもならないか。なお、展示と解説にデジタル化が採用されていて、これは参観者にとってもとてもありがたいことだった。
 これまでに見られなかった(あるいはこれまで見落としていた)コレクションで興味が引かれたのは清院本清明上河図。清明上河図はもとより中国歴代王朝で最も文化が栄えたといわれる宋代の都邑の繁栄ぶりを描いた絵巻物で、宋代当時のものはともかく写本が3本ほど今日に伝わっていて、展示されていたのはこのうちに清院本といわれるもの。
 上河図は長さ10メートルほど。実物のコピーと、拡大したものが幅1.5メートルほどのデジタル画像として展示されていた。
 デジタル画像は人物や車馬などがゆったりと流れるように動いていて当時の殷賑ぶりが伝わってくるようであった。
 なお、この清明上河図は昨年の上海万博で中国館のメイン展示として評判を呼んでいたもので、万博会場では幅6.5メートル長さ128メートルのデジタル画像となっていたのだったが、こうして似たような展示方法を見ていると、このあたりにもこの頃の中台交流の影響が表れているのかもしれないと感じさせられた。

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(故宮博物院正面)

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