秋葉原日記 (ライブラリ)

本川達雄『生物学的文明論』

 自動車やコンピュータを生み出し、豊かな社会を開拓してきた科学技術。一方で、その科学技術は環境問題など多くのひずみも生み出してきた。
 本書はそうした文明を徹底して生物学的視点で論じている。
 サンゴという動物と植物である褐虫藻という全く違った生物が共生している。その共生関係がうまくいく要因にはリサイクルがある。
 生物とそれが棲んでいる環境をひっくるめて生態系と呼び、生物多様性が高いほど生態系は安定する。
 大変な速度で生物が絶滅していっているが、それは私たちが直接その生物を殺しているのではなく、その生物が棲んでいる生態系を破壊しているのだ。
 生物は水でできている。だから農耕にも水が欠かせなく、米1キログラムを作るのに3.6トンの水が必要だ。
 水は反応が起きやすく、水という液体が生命の基本となっている。
 すべからく生物は円柱をしており、円形は強い。
 しかるに人工物は角張っている。
 「環境に優しい技術」「地球に優しい技術」というが、丸と四角に端的に表れているように人工物と生物の設計思想は違う。
 本来、「人にやさしい」というからには、「生物のデザインと大きく違わない」ことが必要になる。
 本書ではこうした論調がずうっと展開されている。
 また、『ゾウの時間 ネズミの時間』の著者らしく、生物のデザインと技術、生物のサイズとエネルギー、生物の時間と絶対時間などと普段考えることの少ない視点で切り込まれているし、ユニークなエピソードも盛り込まれていて面白い。また、この文明論は示唆に富んでいるから、新しい視点で文明を考える機会を与えてくれている。
 ただ、科学技術はそれがひとりで勝手に暴走したものではないわけであって、ときに科学技術と生物学を対局に置くような論点では違和感がないわけでもなかったというのが正直なところだった。
(新潮新書)

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