世田谷区の静嘉堂文庫で開催されている「日本における辞書の歩み」と題する展覧会は、日頃目にすることのできない辞書の数々が展示されていてユニークだった。
静嘉堂文庫は、三菱二代目岩崎彌之助、四代目小彌太父子二代によって設立された図書館で、古典籍や古美術品が収蔵されているとのことで、展覧会は敷地内に付設されている美術館で開催されていた。
順路に従って見ていくと、初めに中国の辞書が展示されていた。
まず目についたのが『説文解字』。後漢時代の字書(辞典のこと)だが、展示されていたのは南宋時代の書写によるもののようで、現存するものとして最古の版だという。重要文化財に指定されている。『説文解字』の存在そのものばかりか内容についても多少知識はあるのだが、実物に向き合うとやはり興奮する。
ほかに康煕字典などもあってやはりその存在はかねて知っているものが多いのだが、それでも実物を目の当たりにするのは初めてというのが大半だった。
中で興味深かったのは『広韻』という字書。これも重文らしいが、北宋時代の1008年に完成したものらしく、四声(中国語のアクセント)で分類されているのが面白かった。
また、『欽定古今図書集成』は清の康煕帝から雍正帝の時代にかけて編纂された中国最大の類書(百科事典のこと)だが、全巻が1万巻というのはには驚かされた。
次は日本の辞書の展示。
珍しいものが多いのだが、『類聚名義抄』は平安時代前期の漢和辞典なそうで、法隆寺の僧らが書写して受け継がれてきたものだと解説してあった。
『波留麻和解』は通称江戸ハルマと呼ばれる我が国最初の蘭和大辞典。ユトレヒトの出版社ハルマが発行した蘭仏辞典から見出し語だけを抜いて蘭和に仕立てたもので1796年の成稿だという。
展示されていた辞書は全部で52点。
随や唐から書写し漢字辞典を持ち込んだのが我が国辞典の嚆矢だろうし、その後も漢和辞典の長い歴史があり、次第に国語辞典が編まれるようになってきて、幕末には蘭和や英和の辞書が必要になってきた、そういう我が国における辞書の歩みが概観できる展示内容だった。
なお、この時代の書物だから体裁はすべて線装本。しかも手書きで書写したものだが、その労苦はいかばかりかと思うと、知に対する執念というものがうかがい知れるようでもあった。
なお、活字版の辞書が登場したのは幕末1862年の『英和対訳袖珍辞書』あたりかららしい。
(静嘉堂文庫美術館外観)
A5判
314頁
ISBN:978-4-88318-560-3
価格:2,640円(本体価格:2,400円)
A4
138
ISBN978-4-88318-063-9
価格:2,200円(本体価格:2,000円)
溶接学会 溶接法研究委員会
B5判
258頁
ISBN:978-4-88318-060-8
価格:13,200円(本体価格:12,000円)