秋葉原日記 (ライブラリ)

「運命交響曲」

 先頃、NHK交響楽団の演奏会がNHKホールであり、ベートーベンの『交響曲第5番ハ短調作品67』が演奏された。
 第5つまり「運命」は、世界で最も有名な交響曲であろうし、日本で最も親しまれている交響曲でもあろう。ただ、この第5交響曲を「運命」と呼ぶのは日本ぐらいしかないそうである。
 さて、運命はかく扉をたたくといわれたあまりにも有名な始まりのフレーズ、ダダダダーン。期待と興奮で緊張する瞬間である。
 指揮はフィンランド出身の女性指揮者スザンナ・マルッキ。
 実は、「運命」の前に演奏された2曲、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」とラロの「スペイン交響曲」を聴いていて、彼女は早いだろうな、とは予想していたが、その切り返しの早さは想像以上で驚くほど。
 カラヤン、ベームそれにワルターまで第5はレコードを持っていて、特にワルターのいかにもワルターらしく長く尾を引いた演奏に感心をしていて、「運命」の演奏を聴くたびにこの出だしのフレーズが気になる。「運命」の演奏はこのフレーズで決まるといいたいくらいだ。
 マルッキの指揮はテンポが速く歯切れがよい。タクトを振るのもエネルギッシュである。
 主題と副題がリフレインされて曲が進む。演奏時間は35分くらいか。交響曲としては短い方だろうが、それだけに密度が高くて演奏中間延びすることがない。聞き慣れた曲だというせいもあるのだろうが、途中で飽きることがない。交響曲の演奏を聴いていて正直なところ実はこれは珍しい。
 暗から明へと構想がはっきりしているし、何よりも交響曲として完成度が高いのではないか。格別にクラシックファンというわけでもないから詳しくはわからないが、そういう印象だ。
 「運命」をオーケストラの生の演奏で聴くのはこれが3度目。このうちN響が2度目で、実に47年ぶりだった。昨年もN響のドヴォルザーク「新世界から」を40数年ぶりに聴いていたが、N響とのつきあいもそれなりに古いということになるのだろう。
 ただ、この日のN響の演奏はあまりよくなかった。パートごとのハーモニーが悪かったように思うし、特に管楽器の出来がよくなかった。
 それにやる気が見られなかった。指揮者が一生懸命な分だけ落差が目立った。演奏中、管楽器のパートで、おそらくフルートだったと思われるが、楽譜を落として大きな音を立てた。こんなことは初めての体験だった。

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